Logo of JTBF
文字サイズ: 

リレーエッセイ 第12回配信

2023年05月01日配信
JTBF 広報委員会

 

3年振りのBOI訪問



 大きなうねりを繰り返したコロナがようやく鎮まりつつあることを受け、3年振りに実行されたJTBF訪タイミッションに参加しました。私にとっても久し振りの渡航であり準備にドタバタしたものの何とか混雑する羽田からの飛行機に乗れましたが、なんとこの便も満席状態で驚きました。日曜日の羽田/バンコク便なのでビジネス関連の方が多いのかと思いきや観光客が多いのも意外でした。5回のワクチン接種をしながらも恐る恐る生活していたのは何だったのかと感じる空港と飛行機でした。

 夕方に着いたバンコクの空港も溢れるほどではないが多くの人がおり、世界はコロナなど気にしていないようでした。入国に際してもコロナ陰性証明書やワクチン接種記録などの提示を要求されずすんなりと通過でき拍子抜けだったこともあり、ここでも日本での縮んだ生活は何だったんだろうと感じざるを得ませんでした。

 JTBF訪タイミッション初日の2月13日(月)はJCCに続き恒例のBOIHQ訪問となり、ナリット長官、ソンクリン副長官、タニタさんや4月からのBOI東京事務所勤務が予定されているオラタイさんなどと打合せを持ちました。

 昨年10月に就任されたナリット新長官もJTBFのことをよく理解されており、いつもながらの温かいご対応と美味しい昼食を頂戴しましたことにも感謝致しております。新長官は昨年11月の来日講演時にもプログラム終了後に日本の投資家をこれからも大事にしたいし、新方針に沿った積極的な奨励策推進を行いたい旨の発言をされるなど前向きの発信が多く、今後に期待したいと思います。また今回のミッションにゲスト参加されたIT関連のGEO Technologies・杉原CEOによる事業紹介には長官も興味を持たれたようでよかったと思います。

 今年初めに施行されたBOIの新方針の説明はタニタさんからなされました。この新方針では先端技術関連への投資促進のみならず長期にわたりタイで運営されている事業のリテンションやエクスパンションにも恩典を与えることも打ち出されており好感が持てました。

 以上の打合せを終えた後、長官を中心に記念写真を撮ってBOIを辞しましたが、今回の訪問でも有意義な時間を持つことができたこと感謝申し上げます。

 さてその後の二日目でしたか、ラーマ4通りからスクンビットへ抜ける際に昔のタバコ工場の公園のようになった一角を車で通り抜けました。スクンビット側はソイ4で38年前の最初の赴任時に住んでいたところです。そこで蘇ったのが1986年5月のバンコク大洪水の記憶です。三日二晩だったか降り続いた雨のため土曜日朝の出勤時(当時は土曜も仕事でした)、マンションの駐車場にはかなりの深さの水がありました。運転手曰く「スクンビットは水が深いのでタバコ工場を抜ける」。普段からタバコ工場を通り抜けることが出来たらいろんな所へ行くのが楽なのに許可証がないと駄目だと頑なだった運転手が「こんな日はいいんだ」と堂々と通り抜けて行きました。いざとなると融通を効かせてくれるタイのいいところを見た気がしますが、その場凌ぎ上手の面でもありますね。その後の洪水の中の運転は見事なものでした。ディンデン付近では水が深くなり車内も踝付近まで水が入って来ていましたが、運転手は裸足になり(オートマ車ではなかったので)右足アクセルを軽く踏み続けてマフラーに水が逆流するのを避けつつ、左足でブレーキとクラッチを調整して走り続けました。上手いものです。勤務先の工場からの帰りは乗用車は無理だというので通勤バスでディンデンまで戻りましたが、ここで動けなくなり運航していた路線バスに乗りました。これもエカマイ付近で動けなくなり、そこからスクンビットのソイ4に向かって胸までの水の中を歩いて帰りましたが、途中で歩道は歩くなとタイの人に怒られました。理由は歩道のマンホールなどの蓋がないとか壊れていることも多いので吸い込まれてしまうぞ、ということでしたが、タイ語のよく理解出来ない私でも何となくなく分かったのでタイ人は必死で危ないことを教えてくれていたのでしょうね。ありがたいことです。

 この1986年5月の洪水は珍しい時期の大雨の影響で当時の貧弱なバンコクの排水対策が原因でした。それから四半世紀後の2011年の大洪水は、改善されたとはいえまだ脆弱なバンコクを守るため、その上流の工業団地を含む地域が遊水地代わりに使われてしまったのがその一因でもあったように思います。2011年の洪水時にナワナコン工業団地で仕事していた私は工業団地周りに増える水に対抗し軍隊も動員して土嚢を積み上げて行く様子も見ていましたが、最後は薄い縦積み状態になっていた土嚢が崩れて浸水し、2m近い高さまでの水に3か月近く浸かることとなりました。平らなバンコク近辺では上流から押し寄せた水がチャオプラヤ川流域全体に広がり、流れ出て行く先がないため、工場の製造設備も長い間、水没することとなってしまいました。製品を出荷出来ずお客様には迷惑をお掛けしましたことも残念でしたし、洪水後に辞めて頂かざるを得なかった従業員には大変申し訳なく思いました。一方、保険金を頂戴しました保険会社にも感謝致しました。洪水被害を受けた工業団地や入居企業はその後も対策を進めていますが、国としても河川管理、洪水対策はまだ不十分なままでこれからも洪水の心配が消えないままなのが気になるところです。

 心配と言えば、この5月に行われる総選挙もその一つで、コロナ禍からの回復途上にある経済を頓挫させるような混乱が起きないことを願いながらこのエッセイを終えます。ありがとうございました。

aaaaaaaa

写真はBOIにて。
左側:事務所フロントにてナリット長官をかこんで。右側:事務所内でのディスカッション。

 

文責 安岡 健 (投資委員会)