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タイ国経済概況(2008年5月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会  

1.景気動向

  1. タイ中央銀行の「インフレーションレポート」(2008年4月22日発表)では、2007年第4四半期(2007年10~12月)のGDP伸び率は年率換算5.7%に達したと発表した。これは過去3四半期で最大の伸び率であり、輸出と民間投資の加速が寄与している。その結果、2007年のGDP伸び率は4.8%となった。また、2008年のGDP伸び率予想は、従来の4.5%~6.0%から4.8%~6.0%に引き上げ、2009年のGDP伸び率予想は4.5%~6.0%とした。同時に、原油高やサブプライム問題による貿易相手国の経済成長の鈍化について言及し、GDP伸び率の下振れリスクが発生しうるとの認識も示している。
  2. タイ中央銀行の月例金融経済報告(4月30日発表、3月実績)によると、貿易収支は、2月の6.2億ドルの赤字から、3月は3.4億ドルの黒字となった。輸出額は146.5億ドル(前年同月比+15.1%)、輸入額は143.1億ドル(前年同月比+31.2%)となった。輸出は順調に伸びているが、それ以上に、国内の旺盛な需要により、輸入が伸びている。経常収支は、2月の7.5億ドルの黒字から9.2億ドルの黒字となり、黒字幅が拡大した。3月末の外貨準備高は1,100億ドル(前月対比+95億ドル)となった。
  3. タイ商務省の5月1日の発表によると、4月単月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で6.2%(前月対比+1.8%)の上昇となり、2年ぶり高水準を記録した。食品・飲料は前年同月比9.8%、非食品は前年同月比3.9%上昇した。食品・飲料の中では、米・粉製品が19.6%、非食品の中では、石油燃料が24.8%と大きく上昇した。生鮮食品とエネルギーを除くコアCPI上昇率は、前年同月比2.1%増(前月対比+0.6%)となった。

2.投資動向

  1. タイ投資促進委員会(BOI)によると、2008年1~3月の外資系企業(外国資本10%以上)による投資促進申請件数は237件(前年同月比+11.8%)、投資申請金額は652億バーツ(同▲11.9%)となった。分野別の投資件数は、サービス・公共施設76件(134億バーツ)、金属製品・機械・輸送機器59件(102億バーツ)、電機・エレクトロニクス34件(184億バーツ)、軽工業23件(34億バーツ)、化学・紙・プラスチック21件(63億バーツ)、農業・農産加工品16件(40億バーツ)、鉱物・金属・セラミックス8件(95億バーツ)となった。外資系企業の国別投資申請件数は、日本90件(総投資額136億バーツ)、シンガポール23件(同167億バーツ)、台湾16件(20億バーツ)、米国13件(12億バーツ)、英国12件(34億バーツ)、韓国11件(11億バーツ)などとなった。

3.金融動向

  1. タイ証券取引所(SET)に上場する商業銀行11行の第1四半期の決算(監査前)が出そろった。バンクタイ銀行(BT)を除く10行が黒字を確保した。大手4行では、バンコク銀行(BBL)、サイアムコマーシャル銀行(SCB)、カシコン銀行(KBANK)が増益、クルンタイ銀行(KTB)が減益となった。
  2. タイ中央銀行によると、2008年3月末の金融機関の預金残高は8兆5,741億バーツ(前年同月比+2.6%)となった。前月対比、伸びが加速している。一方、貸出残高は7兆2,890億バーツ(前年同月比+5.9%)となった。昨年12月から4ヶ月連続で4%以上の伸びを記録し、企業向けの融資が回復し始めていることを窺わせる。

4.金利動向

  1. 4月のバーツ金利相場は、金利が低下してのスタートとなった。4月初めに発表された3月の消費者物価指数は高止まりしていたが、タイ中央銀行から、「第2四半期からインフレは沈静化に向かう見込み」との発言があったことで金利が低下地合いとなり、4月9日のMPC(金融政策決定委員会)を迎えた。MPCでは、市場予想通り金利据え置きとなったが、同時に発表された声明文では、緩和的な金融政策と積極財政に支えられて、内需主導での成長が続くとの期待感を示す一方で、インフレへの警戒感が強調された。金融緩和期待が後退したことに加えて、月半ばから信用懸念の後退から米国金利が急上昇したこともあり、バーツ金利もその動きに追随した。また、タイ中央銀行が2008年GDP伸び率とインフレ予想を上方修正したことや、タリサ中銀総裁の「成長リスクよりもインフレリスクが大きい」「金融政策はインフレをコントロールするもの」と、インフレ重視の金融政策に転換したことを印象付けるコメントなどがあり、金利上昇地合いで越月となった。
  2. タリサ中央銀行総裁の発言により、金融政策は、経済成長重視からインフレ警戒型への移行を印象付けられ、市場では2008年度内の利上げ予想が散見される様になった。更に、5月1日に発表された4月の消費者物価指数は大きく上昇し、2年ぶりの高水準を記録した。米国の状況にもよるが、タイ国内景気が底堅く推移し、インフレ懸念も高まっていることを勘案すれば、金利は下がりにくくなったと考えられる。

5.為替動向

  1. 4月のドルバーツ相場は、主要通貨に対するドル買戻しの圧力が高まったことが影響し、ドル高バーツ安でのスタートとなった。輸入企業のドル買いが活発化する一方で、輸出企業はドル売りを手控えていたこともあって、じりじりとドルバーツは上昇を続け、4月8日には31.80台を回復した。翌9日に開催されたMPC(金融政策決定委員会)では市場予想通り金利据え置きとなり、市場への影響は限定的なものに留まった。しかし、4月10日にシンガポール金融管理局(MAS)が、シンガポールドルの名目実効為替レートの変動幅を上方シフト(シンガポールドル高誘導)したことを材料に、これまでの動きが一転、アジア通貨が全般的に買われる展開となった。加えてソンクラン休暇明けに輸出企業からの実需のドル売りも活発化し、31.40前半までバーツは上昇したが、タイ中央銀行の介入観測もあり、バーツ高に歯止めが掛かった。月末にかけては、再び主要通貨に対するドル買戻しの動きに連れて、31.70台を回復して越月した。円バーツは、ドルバーツがレンジ取引となる一方、ドル円は信用不安後退から円が軟調に推移したことで、円安バーツ高となり、1円0.31台から0.30台へと下落した。
  2. 過去2年はソンクラン後はバーツ高の動きが顕著であったが、2008年は一旦バーツ高の動きとなったものの、その動きは限定的なものに留まった。2008年は経済構造に変化の兆しが見られており、これまでの一方的なバーツ高相場展開ではなく、バーツ安に振れる局面も散見されることが予想される。

6.政治動向

  1. 4月8日政府与党は昨年制定された2007年憲法の改正方針を打ち出した。これは、2007年憲法が2006年9月のクーデターにより発足した暫定政権下で制定されたもので民主的な手続きを踏んでいないという与党・国民の力党内の声の高まりがあるが、特に2007年憲法内の政党幹部の選挙違反が党の解散命令につながるという規定により連立与党が解散訴訟に見舞われているという事情も影響を及ぼしている。一方、この動きに対して野党民主党や現政権に批判的な勢力からは反対意見が上がっており、また連立与党内からも経済対策を優先し改憲を急ぐべきでないとの疑問の声もあり、与党が改憲を強行した場合国内対立が再燃し政局が流動化することが懸念され、事態の推移が注目される。


当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

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