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タイ国経済概況(2008年6月)
タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。
日タイビジネスフォーラム金融委員会
1.景気動向
- 国家経済社会開発庁(NESDB)が5月26日に発表した08年第1四半期(1~4月)のGDP伸び率(前年同期比速報値)は6.0%増となり、07年の第4四半期(10~12月)の5.7%を上回った。また、2008年の通年のGDP伸び率予測値は4.5%~5.5%としており、消費者物価指数(CPI)上昇率の高止まりや原油高の進行にも関わらず、前回の08年3月の予測値と同じとした。その理由として、民間投資や消費が急回復していること、そして、それらの回復を持続させるため税務恩典などの措置を講じていることをあげた。
- タイ中央銀行の月例金融経済報告(5月30日発表、4月実績)では、貿易収支は、3月の3.4億ドルの黒字から、4月は17,7億ドルの赤字となった。輸出額は136.3億ドル(前年同月比+27.7%)、輸入額は154億ドル(前年同月比+41.5%)となった。原油価格高騰の影響を受けて、燃料関連の輸入費用が増加した。経常収支は、3月の9.2億ドルの黒字から、16.6億ドルの赤字となった。4月末の外貨準備高は1,098億ドル(前月対比▲2億ドル)となった。
- タイ商務省の6月2日の発表によると、5月単月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で7.6%の上昇となり10年ぶりの高水準を記録した。食品・飲料は前年同月比11.8%、非食品は前年同月比5.1%上昇した。食品・飲料の中では、米・粉製品が34.6%、非食品の中では、石油燃料が31.2%と大きく上昇した。生鮮食品とエネルギーを除くコアCPI上昇率は、前年同月比2.8%増(前月対比+0.7%)となった。
2.投資動向
- タイ投資促進委員会(BOI)によると、1~4月の外資系企業(外国資本10%以上)による投資促進申請件数は309件(前年同月比+15.7%)、投資申請金額は915億バーツ(同▲0.7%)となった。分野別の投資件数は、サービス・公共施設91件(169億バーツ)、金属製品・機械・輸送機器74件(119億バーツ)、電機・エレクトロニクス47件(254億バーツ)、化学・紙・プラスチック37件(183億バーツ)、軽工業32件(42億バーツ)、農業・農産加工品18件(52億バーツ)、鉱物・金属・セラミックス10件(96億バーツ)となった。外資系企業の国別投資申請件数は、日本121件(総投資額194億バーツ)、シンガポール30件(同177億バーツ)、台湾20件(同25億バーツ)、韓国19件(同20億バーツ)、英国14件(37億バーツ)、マレーシア14件(同16億バーツ)、米国14件(同13億バーツ)などとなった。
- タイ政府は6月3日の定例閣議で、エタノール含有率85%のバイオガソリン「E85」の利用促進を図る税制措置を承認した。税制措置については、次の通り。①国内で生産されていないE85対応車用部品の輸入関税を3年間の免除。②E85対応車の物品税率を排気量に応じて減税。③E85燃料に課す物品税を1リットルあたり2.5795バーツとする(ガソリンは3.6850バーツ)。
3.金融動向
- タイ中央銀行によると、4月末の金融機関の預金残高は8兆6,784億バーツ(前年同月比+2.5%)となった。一方、貸出残高は7兆3,728億バーツ(同+7.0%)となり、昨年12月から5ヶ月連続で4%以上の伸びを記録した。企業向けの融資が回復し始め、運転資金の貸出が伸びている。
4.金利動向
- (5月の回顧)バーツ金利相場は、金利上昇地合いでのスタートとなった。月初に発表された4月消費者物価指数は原油・食品価格の上昇を背景に2年ぶりの高水準を記録し、金利上昇圧力となった。タリサ中銀総裁から「コアインフレがターゲット内(0~3.5%)であれば、金融政策を変更する必要はない」、スラポン財務相から「インフレ上昇に利上げで対応する必要はない」との発言もあり、金利上昇には歯止めが掛かった。5月21日のMPC(金融政策決定委員会)では、市場予想通り金利据え置きとなり、同時に発表された声明文では、景気見通しが下方修正され、インフレ警戒感が強められた。しかし、「インフレが更に加速するようであれば、MPCは政策変更(利上げ)の用意がある」という一文が加えられていたことから、市場では利上げへの警戒感が強まり、金利はじりじりと上昇。更に政局不透明感から、これまで海外から債券市場へ流入していた資金逃避も加わり、大幅な金利上昇の動きとなった。
- (6月の展望)年内の利上げ期待幅は0.5%を超えており、景気見通しが下方修正されていることを考えれば、更なる金利上昇は考えにくい。その一方で、5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は市場予想を大きく上回る7.6%を記録、コアCPI上昇率も2.8%とターゲットレンジ(0~3.5%)の上限へ近づいており、利上げ警戒感は強まることが予想され、金利は下がりにくい。
5.為替動向
- (5月の回顧)ドルバーツ相場は、主要通貨に対してドル買戻しの動きがあったものの、バーツ相場への影響は限定的で、1ドル31.70バーツを中心として方向感なくスタート。8日には、原油高を受けた景気悪化懸念から、アジア通貨が対ドルで全面安となり、31.95バーツを記録した。その後、輸出筋が一旦様子見となってドル売りを手控える中、ドル買いが継続し、月半ばには32.50近辺まで上昇。自国通貨安の動きに歯止めを掛けるべく、シンガポール、マレーシア、インドネシア、台湾等の周辺国が、ドル売介入を実施したことで、アジア通貨安が一服、タイ中央銀行も過度の変動を抑えるべく介入を実施したとの観測も浮上した。その後は、堅調なタイ株式市場への資金流入や投機筋のドル買ポジション解消と見られる動きにより、バーツ高となり一時32.00割れとなった。しかし、株式市場が下落に転じたこと、憲法改正の動きにより政局に不透明感が強まったことにより、徐々にバーツ売の動きが優勢となり、32.50近辺で越月となった。円バーツは、ドル円がレンジ取引となる一方、バーツが対ドルで下落したことから、円高バーツ安となり1円0.30台前半から0.30台後半へと上昇した。
- (6月の展望)①4月貿易収支が大きく赤字を記録したこと(経常フローの変化)、②政局不透明感、③インフレ懸念増大(景気悪化懸念)などバーツ安を支援する材料が多く、ドルバーツは底堅く推移することが予想される。
6.政治動向
- 5月27日タイ政府は、憲法改正の是非を問うための国民投票の実施を閣議承認した。一方、憲法改正をタクシン元首相の復活を目論むものとして反対する有力市民団体の「民主主義市民連合」はバンコック市内で数千人規模の路上集会を開催し、憲法改正の撤回を求める抗議の姿勢を強めている。6月2日タイの与野党は、憲法改正について特別委員会を設置することで原則合意した。特別委員会は、上院・下院議員と専門家からなり、改正の是非及び改正するべき点について検討を行う。憲法改正を推進するサマック政権とこれに反対する反政府集会の動きが連日伝えられる中、与野党が憲法改正問題について話し合いの場を持ち対立の緩和を模索すると見られる。
当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
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