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タイ国経済概況(2008年7月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会  

1.景気動向

  1. タイ中央銀行の月例金融経済報告(6月30日発表、5月実績)では、貿易収支は、4月の17.7億ドルの赤字から、5月は12.7億ドルの黒字となった。輸出額が過去最高を記録したことや石油燃料の輸入額が減少したことにより、貿易収支は黒字化した。輸出額は153億ドル(前年同月比+22.1%)、輸入額は140.3億ドル(同+15.7%)となった。経常収支は、4月の16.6億ドルの赤字から、5月は6.3億ドルの黒字となった。5月末の外貨準備高は1,089億ドル(前月対比▲9億ドル)となった。
  2. タイ商務省の7月1日の発表によると、6月単月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で8.9%の上昇となり、1998年6月の9.8%に次いで高水準となった。食品・飲料は前年同月比11.4%、非食品は前年同月比7.2%上昇した。食品・飲料の中では米・粉製品が35.8%、非食品の中では石油燃料が44.7%と大きく上昇した。生鮮食品とエネルギーを除くコアCPI上昇率は、前年同月比3.6%増(前月対比+0.9%)となった。
  3. バンコック日本人商工会議所(JCC)は6月24日、2008年春季の日系企業景気動向調査の結果を発表した。調査は会員企業1,278社を対象にしたもので、回答企業数は337社。07年下半期(7月~12月)の業況が、07年上半期(1月~6月)に比べ、「上向いた」との回答は49%、「悪化した」との回答は24%。「上向いた」から「悪化した」を差し引いた景気動向指数(DI)はプラス25となり、07年上半期のプラス8から改善した。同様に、2008年上半期のDIはプラス26となった。しかし、08年下半期見通しのDIはプラス23とやや悪化した。

2.投資動向

  1. タイ投資促進委員会(BOI)によると、1~5月の外資系企業(外国資本10%以上)による投資促進申請件数は365件(前年同月比+6.1%)、投資申請金額は1,009億バーツ(同▲17.9%)となった。投資申請金額が前年同月対比減少したのは、投資額が1億バーツ未満の小規模投資申請が全体の62.5%を占めたため。分野別の投資件数は、サービス・公共施設104件(161億バーツ)、金属製品・機械・輸送機器86件(150億バーツ)、電機・エレクトロニクス58件(279億バーツ)、化学・紙・プラスチック44件(178億バーツ)、軽工業37件(69億バーツ)、農業・農産加工品21件(56億バーツ)、鉱物・金属・セラミックス15件(117億バーツ)となった。外資系企業の国別投資申請件数は、日本143件(総投資額257億バーツ)、シンガポール32件(同166億バーツ)、台湾25件(同34億バーツ)、韓国22件(同25億バーツ)、マレーシア19件(同33億バーツ)、英国18件(同43億バーツ)、米国17件(同20億バーツ)などとなった。

3.金融動向

  1. タイ中央銀行によると、5月末の金融機関の預金残高は8兆6,913億バーツ(前年同月比+1.5%)となった。一方、貸出残高は7兆4,754億バーツ(同+8.0%)となった。企業向けの融資が、インフレ影響による運転資金需要増により増加しているものと見られる。

4.金利動向

  1. (6月の回顧)バーツ金利相場は、月初に発表された5月消費者物価指数(CPI)が市場予想を大きく上回る7.6%を記録し、コアCPI上昇率も2.8%とターゲットレンジ(0~3.5%)の上限へ近づいたことで、利上げ警戒感の高まりから金利上昇地合いでのスタートとなった。その後も、中央銀行や財務省要人からの利上げを示唆する発言が相次いだ。要人の発言は次の通り。「MPC(金融政策決定委員会)では、インフレ上昇が続けば行動を起こすと明確なサインを送った」、「インフレ率は第3四半期には2桁になる可能性がある」(アマラ中銀国内経済局長)、「インフレと渡り合うために、金融政策を使用する準備は出来ている」、「実質金利はマイナスで、利上げによる景気への影響はあまりない」(タリサ中銀総裁)、「政策金利は2008年末までに、最大で4.25%まで上昇する可能性がある」(パンニー財政局長)、「2008年下半期は、消費者物価指数(CPI)が金融政策にとって最も重要な要因となる」(バンディッド副総裁)。市場では、早期利上げ観測が高まり、月中を通して金利上昇が続いた。
  2. (7月の展望)6月のコアCPI上昇率は3.6%と、タイ中央銀行のターゲットレンジ(0~3.5%)を超えており、利上げ期待が強い。金利は下がりにくい展開が続くと予想される。

5.為替動向

  1. (6月の回顧)ドルバーツ相場は1ドル32.50近辺で始まった。スチャダ総裁補から、「バーツ下落は株式市場からの資金流出によるもの」と指摘があった様に、株安を背景にバーツ売りの動きが鮮明になった。軍部からクーデターを否定する発言が出されたものの、政局不透明感は収まりを見せず、株式市場の下落は止まらなかった(6月は21営業日中、19営業日において外国人投資家が売り越し、月間のネット売り越し額はUSD10億ドルに達した)。6月6日には節目とされた33台を回復し、33台半ばまでバーツ安が進行した。スチャダ総裁補は「バーツ下落が急すぎるため、市場介入を実施した」と、バーツ安に歯どめを掛けるべくタイ中央銀行がドル売バーツ買介入実施を明言したことから、介入警戒感により一時的にバーツ高に触れる場面もみられた。しかし、大規模デモが実施されるなど不安定な政局を背景に、バーツは軟調に推移することなり、33.50近辺での越月となった。円バーツは、ドル円がレンジ取引となる一方、バーツが対ドルで下落したことから、円高バーツ安となり1円0.30台後半から0.31台後半へと上昇した。
  2. (7月の展望)①輸入企業や国営企業によるドル買バーツ売の需要が旺盛なこと、②政局不透明感を背景とした資金流出、③経常フローに変化の兆しなど、バーツ売材料が依然として多く、当面はバーツ安相場が継続されると予想される。

6.政治動向

  1. 6月18日、野党第1党の民主党はサマック首相や閣僚7人に対する不信任決議案を国会に提出した。不信任理由は、タクシン元首相勢力への利益誘導や経済対策の失敗、タイ南部国境県の治安悪化等としている。不信任案は、27日に採決され与党の信任多数で否決された。しかしながら、7月8日に国民の力党の元役員であったヨンユット前下院議長が最高裁判所から選挙違反の判決を受けたため、今後憲法裁判所の判断如何では国民の力党は選挙違反の関与により解党が命じられる可能性が高まった。同党が解党命令を受けた場合、現行憲法の規定により、党首のサマック首相を始めとして、党役員は5年間の公民権停止となる。これを回避するため今後、国民の力党から新党への主要メンバーの移動や解散総選挙など、現与党勢力の政権維持のための動きが予想される。


当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

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