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タイ国経済概況(2010年5月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会  

1.景気動向

  1. タイ中央銀行は4月29日、2010年の経済成長率(GDP伸び率)について4.3%~5.8%になるとの見通しを示した。民間投資や輸出が特に改善しており持続的な景気回復が見込まれるうえ、2009年の経済成長率が▲2.3%と落ち込んだことによるローベース効果もあり、高い成長率が期待される。
  2. タイ中央銀行の月例金融経済報告(4月30日発表、3月実績)によると、3月単月の輸出額は161億ドル(前年同月比+41.0%)、輸入額は150億ドル(前年同月比+62.0%)となった。農産品とハイテク分野をはじめ幅広い産業で国内外の需要が拡大しており、輸出・輸入とも回復傾向にある。貿易収支は11億ドルの黒字、経常収支は17億ドルの黒字。3月末時点の外貨準備高は、1,441億ドル(前月比+23億ドル)となった。
  3. タイ商務省の5月3日の発表によると、4月単月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比で+3.0%(食品・飲料+3.7%、非食品+2.5%)で、7ヶ月連続でプラスとなった。4月単月のコアCPI(除く生鮮食品、エネルギー)上昇率は、前年同月比+0.5%で6ヶ月連続でプラスとなった。

2.投資動向

  1. タイ投資促進委員会(BOI)によると、2010年1月~3月の外資系企業(外国資本10%以上)による投資促進申請件数は184件(前年同期比+30.5%)、投資額は444億バーツ(同2.4倍)となった。投資額が1億バーツ未満の小規模投資申請が全体の65.8%を占めた。分野別の投資申請件数/金額は、金属製品・機械・輸送機器:44件/144億バーツ、サービス・公共施設:42件/103億バーツ、電機・エレクトロニクス:38件/71億バーツ、化学・紙・プラスチック:23件/43億バーツ、農業・農産加工品:19件/41億バーツ、鉱物・金属・セラミックス:5件/22億バーツ、軽工業:13件/19億バーツとなった。国別では、日本:66件(前年同期比+17.9%)/216億バーツ(同2.5倍)で件数/金額ともトップ。続いて、中国:8件/64億バーツ、シンガポール:21件/61億バーツ、香港:7件/23億バーツ、インド:2件/14億バーツ、オーストラリア:4件/14億バーツ、デンマーク:4件/13億バーツなどとなった。

3.金融動向

  1. タイ中央銀行の発表によると、2010年3月末時点の金融機関の預金残高は9兆9,851億バーツ(前年同月比+5.1%)、貸出残高は8兆9,655億バーツ(前年同月比+6.0%)となった。2008年9月以降の金融緩和政策を受けて預金超過が依然顕著だが、茲許民間企業の業況が上向き運転資金の需要が伸びている。

4.金利動向

  1. (4月の回顧) 4月のバーツ金利相場は、長期化する反政府デモによる経済への影響が懸念されたことで利上げ観測が後退し、金利低下の動きとなった。周辺国ではシンガポール(14日)やインド(20日)などで金融引き締めが行われているものの、21日に開催されたMPC(金融政策決定委員会)では市場予想通り金利据え置きが決定。同時に発表された声明文では、景気は底堅く、コアインフレは今後上昇が持続されるとの見通しを表明しており、タイ中央銀行としては政情不安がなければ利上げを実施したかったとの印象が感じ取れた。しかし、当地では政情不安が収まることはなく長期化し実体経済へ影響が出ることが懸念されおり、さらにコアインフレも落ち着いていることから金融引き締めにはしばらく時間がかかるとの見方が大きくなっている。
  2. (5月の展望) 反政府デモの行方に注目。反政府デモによる実体経済への影響は避けられず、さらにコアインフレも落ち着いている状況から、利上げ観測は後退している。しかし、反政府デモが収束に向かえば、利上げへ向けた一つのハードルがクリアされ、市場では利上げ期待が高まる可能性が考えられる。

5.為替動向

  1. (4月の回顧) 4月のドルバーツ相場は、1ドル=32.35バーツ近辺からスタート。バンコック市内最大の繁華街を中心に反政府デモが継続されたにもかかわらず、タイ株式市場は堅調に推移し年初来高値(820.09)を更新したことや、中国での金融政策変更(人民元の切り上げ観測)が近いとの思惑などにより、バーツ買地合いが優勢となった。しかし、7日にバンコクに非常事態宣言が出されたこと、10日に25人の死者を出した強制排除を受けて株式市場が急落、一転してバーツ安の流れに。ところが、バーツ安局面となると国内輸出企業からのドル売/バーツ買のフローが多く見られ、逆にバーツ高の勢いが強まり32.20割れと年初来バーツ高値を更新した。その後は、22日にシーロム通りで爆発事件、28日にデモ隊と治安部隊が再び衝突するなど政情不安が再び拡大したことで、さすがにバーツ安の勢いが強まり、32.35近辺での越月となった。1円=0.34バーツ半ばで始まった円バーツ相場は、堅調な米国雇用統計やギリシャ問題を受けてドルが全般的に買われたことでドル円が上昇、若干の円安/バーツ高水準となる0.34台前半での越月となった。
  2. (5月の展望) ギリシャ問題を発端としたリスク回避の動きや当地での政情不安が継続されているにもかかわらず、バーツ安の動きは限定的となっている。貿易統計では、貿易黒字額が増加しており、実需のドル売/バーツ買によりドルバーツの上値は引き続き重い状況が続くことが予想される。

6.政治動向

  1. 下院の早期解散・総選挙を求めるタクシン元首相派「反独裁民主戦線(UDD)」のデモ活動過激化を受け、タイ政府は4月7日非常事態宣言を発令。デモ隊と治安部隊との間で緊張が高まった10日、バンコック市内王宮周辺で衝突が発生し、日本人カメラマン1人を含む25人が死亡、800人以上が負傷した。
  2. 4月22日バンコック市内シーロム通り周辺でUDDに反対する市民集会に向けて手榴弾が打ち込まれる爆発事件が発生し、1人が死亡した。周辺に位置する複数の日系企業が臨時休業を余儀なくされるなど、ビジネスにも影響が及んだ。
  3. アピシット首相は5月3日、UDDのデモ隊解散及び対立解消に向けた妥協案として11月14日に下院総選挙を行う意向を示した。UDDはこれに対し条件付で受け入れる意向を示したものの、依然両者の溝は深く、デモ隊による市街地占拠の終息までには紆余曲折が予想される。


当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

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