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タイ国経済概況(2010年7月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会  

1.景気動向

  1. タイ財務省は6月29日、今年の経済成長率予想を+5.5%に上方修正した。3-5月の騒乱の影響は予想よりも軽微にとどまる一方、世界経済の回復が予想以上のテンポで進んでおり、なかでもタイの貿易相手国として重要性を増しているアジア地域が急激に経済回復していると指摘。2010年の輸出は、従来予想を上回りそうだとして、3月時の予測値+4.5%から1.0%上方修正した。
  2. タイ中央銀行の月例金融経済報告(6月30日発表、5月実績)によると、5月単月の輸出額は164億ドル(前年同月比+42.5%・前月比+26億ドル)、輸入額は141億ドル(同+53.5%・同+1億ドル)。輸入も伸びる一方で、輸出は引き続き高水準にあり増加中。貿易収支は23億ドルの黒字となり、前月の▲2億ドルから黒字転換。5月末時点の外貨準備高は、1,435億ドル(前月比▲41億ドル)。
  3. タイ商務省7月1日の発表によると、6月単月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比+3.5%(食品・飲料+7.1%・非食品+1.5%)で9ヶ月連続でプラスとなった。6月単月のコアCPI(除く生鮮食品、エネルギー)上昇率は、前年同月比+1.1%で8ヶ月連続プラスとなった。

2.投資動向

  1. タイ投資促進委員会(BOI)によると、2010年1-5月の外資系企業(外国資本10%以上)による投資促進申請件数は306件(前年同期比+35.4%)、投資額は863億バーツ(同2.1倍)となった。投資額が1億バーツ未満の小規模投資申請が全体の65%を占めた。分野別の投資申請件数/金額は、農業・農産加工品:33件/66億バーツ、鉱物・金属・セラミックス:7件/246億バーツ、軽工業:16件/24億バーツ、金属製品・機械・自動車関係:82件/189億バーツ、電子・電気産業:61件/118億バーツ、化学・紙・プラスチック:39件/89億バーツ、サービス・公共施設:68件/132億バーツとなった。国別では、日本:120件(前年同期比+42.9%)/330億バーツ(同1.9倍)で件数/金額ともトップ。続いて、シンガポール32件/77億バーツ、中国:12件/65億バーツ、香港:11件/27億バーツ、オーストラリア:9件/21億バーツ、台湾:14件/19億バーツ、インド:5件/15億バーツ、ドイツ:14件/15億バーツ、などとなった。
  2. マプタプット地域の公害問題解決のために設置された政府、工事事業者、地域社会と専門家の4者代表からなる特別委員会は6月28日、憲法第67条の規定を遵守しなければならない工業プロジェクトや経済活動のリストアップ作業を終了し、7ヶ月に及んだ活動の終了を宣言した。憲法第67条の規定の対象となる規制業種リストの中身は明らかにされていないものの、最終的に18業種に絞り込まれた模様。報告内容は今後、国家環境委員会の会合で承認される見通しとなっている。

3.金融動向

  1. タイ中央銀行の発表によると、2010年5月末時点の金融機関預金残高は10兆2,208億バーツ(前年同月比+6.5%)、貸金残高は9兆1,025億バーツ(同+7.3%)となった。
  2. タイ政府は7月6日、次期中央銀行総裁にカシコーン銀行のプラサーン・トライラットウォラクン頭取が就任する人事を閣議承認した。プラサーン頭取は、タリサ現総裁が9月末で定年退職した後、総裁職に就く。新総裁の任期は1期5年。さらに1期留任は可能だが、65歳が上限。

4.金利動向

  1. (6月の回顧)6月2日に開催されたMPC(金融政策決定会合)では金利据置きが決定された。同時に発表された声明文では、①景気は好調だが欧州問題と国内政情による下ぶれリスクあり、②依然として今後のインフレ懸念を表明。景気見通しがはっきりすればインフレ予防的な利上げを予見させるものとなり、金利上昇地合いとなった。バンディッド中銀副総裁の「景気回復のための過度な低金利の必要性は減少したので、レート正常化の準備は出来ている」等、利上げに前向きな発言が目立った。月後半になると、欧州財政問題や悪化する米国経済指標を背景とした景気減速への警戒感から世界的に金利低下地合いが鮮明となり、バーツ金利も追随して低下した。
  2. (7月の展望)輸出を中心とする堅調な経済を受けて、タイ当局から利上げに対する前向きな発言が目立つが、MPCで挙がった欧州財政問題リスクは継続。更に米国、中国に景気不安が拡大しつつある。また欧米を中心とした金利低下も、バーツ金利低下につながっている。世界的な金利低下傾向であるが、利上げ期待が強いだけに緩やかなバーツ金利の下げを予想する。

5.為替動向

  1. (6月の回顧)6月のドルバーツ相場は、月初欧州財政問題、米雇用統計悪化を受けてリスク回避の動きが活発化し32.68バーツと3ヶ月ぶりのバーツ安水準に到達した。その後、中国の好調な輸出が発表されたこと、5月のタイの貿易収支が、22.1億ドルの黒字と今年最大の黒字額を計上したことからバーツ買いが進行した。19-20日の中国政府による人民元相場弾力化を受けて、アジア通貨高が加速し、ドルバーツは32.285まで進行したが、中国当局の管理下、緩やかに人民元を動かすとのスタンスが確認されたことから、32.40近辺に戻した。急速な動きとなった場合、タイ中央銀行の介入があり、バーツは一方的な動きになりにくい。6月に入ってから、米国経済指標の悪化が目立ち始め、FOMC声明文で景気判断を若干下方修正したことから、米景気への懸念が拡大した。円バーツ相場は、0.35台での動きが中心であったが、リスク回避の動きで、ドル円、ユーロ円が円高となったことから、円バーツも0.365近辺まで円高が進行した。
  2. (7月の展望)タイ経済は輸出を中心に堅調、また利上げ期待もあり、バーツにプラスに作用している。但し、欧米での景気悪化懸念、また中国の景気過熱抑制策と、外部ではバーツのマイナス要因が拡大している。内外要因での綱引きの中、当面バーツ高が進みにくいことを予想する。

6.政治動向

  1. タクシン元首相支持派「反独裁民主統一戦線(UDD)」の反政府デモにより亀裂の深まった国民間の和解プロセスの骨格がアピシット首相より6月中旬提案された。和解のための5項目(①王室擁護②報道メディア改革③騒乱事件真相究明④社会改革⑤憲法改正)のうち王室擁護を除く4項目については既に組織作りが始まっており、今年の10月迄にそれぞれが政府に報告書を提出、政府はこれらを纏めて年末迄に具体化に向けた実施計画を発表する予定。しかし、政府主導のプロセスや委員会の人選についてタクシン派から非難が出ており、共同作業への参加を拒否する構えも見せている。国内対立の解消という所期の目的が果たせるか、未だ不透明な状態が続いている。
  2. タイ政府は7月6日、UDDの反政府デモに対する非常事態宣言について、治安が依然不安定だとして、一部の県を除き7日から3ヶ月延長すると閣議決定した。発令を解除するのは以下5県(東北部シーサケート、カラシン、北部ナーン、ナコンサワン、中部ナコンパトム)。5月19日の強制排除によりデモ隊は解散したが、6月下旬に連立与党のタイ誇り党本部前や中部の県で爆発事件が相次いでおり、アピシット首相は「UDDが依然活動しているとの報告がある」と述べている。


当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

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