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タイ国経済概況(2017年5月)

タイ商務省、タイ中央銀行、国家経済社会開発庁(NESDB)から発表される諸指標に基く経済動向、タイ投資委員会(BOI)から発表される投資動向、および政治面での主要な動きを、月次まとめてお送りします。

日タイビジネスフォーラム金融委員会  

1.景気動向

  1. タイ商業省(MOC)は4月24日、3月の物品輸出額が前年同月比+9.2%の208.9億ドルだったと発表した。単月で200億ドルを超えたのは2014年10月以来で、第1四半期合計でも前年同期比+4.9%の564.6億ドルと、4年ぶりの高水準となった。特に天然ゴムは中国、日本、マレーシアへの輸出増で+95.4%と大幅に増加。これを受けタイ財務省のクリサダ財政政策局長は27日、2017年の国内総生産(GDP)成長率が16年の+3.2%から+3.6%に加速するとの見通しを明らかにした。
  2. タイ中央銀行(BOI)は4月28日、第1四半期のタイ経済は引続き拡大したと発表した。輸出の増加が牽引役となったほか、民間消費も農作物の価格上昇に伴う農家収入の上昇と消費者信頼感の回復により、乗用車などの耐久財を中心に伸長した。観光業でも中国、マレーシアからの観光客増加により3月は前年同月比+2%となった。一方、民間設備投資はエネルギー、サービス、輸出関連業の設備投資の増加が昨年度をもって一巡したことにより、建設、設備関係ともに減少した。
  3. タイ工業連盟(FTI)は4月26日、第1四半期の自動車生産台数が前年同期比▲4.2%の48.6万台(内国内向けが同+2.6%の19.7万台、輸出向けが同▲8.4%の28.8万台)となったと発表した。輸出台数を地域別でみると、オセアニアが+4.7%の8.4万台と首位、前年同期1位だったアジアは同▲13.4%の7.6万台で2位となり、3位だった中東は原油価格の低迷により同▲58.7%の3.3万台で5位となった。アジア向けの減少要因としては、中国向け乗用車の出荷が減少していることに加え、タイ産モデルと比較してより低価格のインド産モデルが、ベトナム輸入車市場でのシェアを拡大させていることなどが挙げられる。一方、FTIのスラポン広報担当は、北米や中南米への出荷は増えているとの理由から、通年目標である生産200万台(内輸出向け120万台、国内向け80万台)は据置くとの方針を明らかにした。
  4. タイ私立商工会議所大学(UTCC)は4月27日、月収1.5万バーツ未満の世帯を対象とした家計債務に関する調査結果を発表。全世帯の97%が借金を抱えているほか、1世帯あたりの家計債務額は平均13.1万バーツとなり、8年ぶりの高い水準となった。過去3年間の景気低迷期に、主要農産物価格が下落し所得水準が硬直的な中で物価上昇が進んだことにより、累積債務とそれに伴う金利負担が膨らんだ。一方、新たな借入れは自動車、オートバイ、住宅などの耐久消費財に充てられているため、債務増による過度な懸念は必要ないとの認識も示した。

2.投資動向

  1. タイ投資委員会(BOI)は1~2月の投資統計で、申請総額は前年同期比▲0.9%の305.4億バーツ、2月単月では2年ぶりの低水準となったと発表した。業種別に見ると、「サービス・インフラ」が同+49.1%の152.8億バーツと伸びた一方、「農業・農産物加工」「電気・電子」「化学・プラスチック・紙」が2桁減少となった。1月、2月にそれぞれ施行された改正投資奨励法、特定産業競争力強化法の対象業種が未だ不明確であり、投資を検討している企業が様子見ムードに入っていると見られる。なお、政府が15~21年の投資誘致計画で指定しているターゲット産業10分野での申請額は、前年同期比+35%の211.4億バーツで、全体の7割近くを占めた。特に「省エネおよび代替エネルギー」が2.5倍の78.7億バーツとなったことが寄与した。 
  2. 長期国家戦略として経済特区(SEZ)「東部経済回廊(EEC)」開発が6月末までに法令化される見通しの中、4月11日の閣議にてEEC法草案の第2稿が承認された。同法では、官民連携(PPP)や環境影響評価(EIA)の手続きの短縮、EEC住民向けの健康・教育・環境に関する特別基金の設置などを明記。その他、EEC3県(チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオ)への投資に限定した恩典として、BOI基本優遇プラス5年間の法人税50%減免、戦略的事業への15年間の法人税免除、EECに本社を設置した戦略的産業企業の投資家、経営者、専門家の個人所得税の最大17%免除、などが謳われている。

3.金融動向

  1. タイ中央銀行の発表によると2017年3月末時点の金融機関預金残高は18兆649億バーツ(前年同月比+2.7%)、貸金残高は16兆7,283億バーツ(同+3.6%)といずれも増加。

4.金利動向

  1. (4月の回顧) 4月のドルバーツ相場は、月間では34.25~67のレンジ内で上下。月初ドルバーツは34.28あたりと前月末比下からスタートした後、米中首脳会談を控えて米中関係の緊張感が高まることが警戒されドルバーツが上昇地合いに。7日早朝に、米軍によるシリア軍事施設への空爆との報道が伝わるとドルバーツはさらに上昇し、34.67と月間高値をつけた。米軍のシリア攻撃は長期化しないとの見方が台頭し相場反転となったが、米中首脳会談、米雇用統計を控えてドルバーツの下落は限定的。この日夜間に発表された米雇用統計は事前予想を下回る結果となったが、10日のドルバーツは月間の高値圏で推移と底堅さを見せた。ソンクラン明けの17日にはトランプ米大統領によるドル高けん制発言や北朝鮮事情の緊迫化で、ドルバーツは34.25まで低下。月間の安値をつけた。21日にはタイ中銀総裁が市場介入の可能性を示唆したことや米税制改革への期待から34.44まで値を戻した。23日に実施された仏大統領選の第1回投票は大方の予想通りマクロン、ルペンの組み合わせで決選投票進出となり、欧州政治リスクへの懸念は一旦後退したが、北朝鮮情勢への警戒感でドルバーツは上下。26日海外時間に発表された米税制改革は新味も具体性もないものであり市場の失望を誘った。これを受けてドルバーツは弱含む局面あったが、月末にかけては外国人投資家の証券市場での利益確定売りに伴うバーツ売りが出たことや、タイ中銀の短期中銀債の発行枠削減の延長発表で一時34.65まで上昇するも月間高値には届かず34.61で越月となった。
  2. (5月の展望) 米利上げ動向、トランプ米大統領の政策が引き続き主要テーマ。6月の利上げ織り込みは足元急速に高まっているが、データ次第であるため今月、来月の経済指標に振らされるも、米国の利上げスタンスは不変であるため基本的にはドル高地合が継続するものと思われる。一方で、地政学リスク、欧米政治リスク時にはバーツは買われやすく、波乱要因。

5.為替動向

  1. (4月の回顧) 4月初、米労働環境の改善期待から米国債金利小幅上昇するも、3日にロシアで地下鉄爆発があり、テロの可能性が指摘されたことや7日早朝の米軍によるシリア軍事施設空爆の報道を受け米国債金利が低下。これを受けて月初2.72%でオープンしたタイ国債10年物金利は一時2.63%まで低下したが、週末に米雇用統計を控えて金利低下一服となった。7日海外時間に公表された米雇用統計のヘッドラインは事前予想を大幅に下回るもので米国債金利も低下したが、次第に天候要因によるものとの見方が広がったことや、ダドレー・NY連銀総裁がバランスシート縮小に関してのコメントをしたことから反転上昇となった。ソンクラン期間中には、トランプ大統領が「ドルは強すぎる」「低金利政策が好ましい」と発言したことを受けて、米国債金利は大幅に低下。ソンクラン明け、タイ国債金利もこの動きを受けて大幅に低下。さらに、米軍が北朝鮮のミサイル発射実験の迎撃を検討との報道で一気にリスク回避姿勢が強まり、タイ国債10年物の金利は一時2.60%まで低下が進んだ。23日に実施された仏大統領選はポピュリズムの台頭がマーケットで懸念されていたが、マクロン、ルペンの組み合わせで決選進出と無難な結果になったことや、地政学リスクの後退、米国で税制改革への期待が高まったことなどから米国債金利反転上昇。これに連れて、タイ10年物国債金利も一時2.78%まで上昇。2.73%で越月。一方のタイ2年物国債金利は、政策金利が当面据え置かれるとの見通しから1.64%~1.69%と狭いレンジを方向感なく推移した。なお、月末にタイ中央銀行が公表した月例経済金融報告では、3月のタイ経済は前月に引き続き拡大したと評価。海外需要増による輸出の拡大がけん引。インフレに関しては、ヘッドラインは前月から減速。主に生鮮食品とエネルギー価格によるもの。経常収支は輸出が上向いていることから黒字基調継続と各項目について指摘。
  2. (5月の展望) タイ経済は輸出の回復が景気を牽引するも、グローバル経済の先行き不透明感からタイ中央銀行はダウンサイドリスクをより懸念。一方、家計債務が膨らんでいることがタイ経済のアキレス腱となっている環境下、当面政策金利を据え置き、様子見姿勢継続が予想される。外部環境の影響を受けやすい長期金利を中心に米国金利に振らされる可能性が高く、米利上げ動向に注目。

6.政治動向

  1. 4月4日に国家平和秩序維持評議会より出された布告No.21/2560(同日官報掲載、施行)にて、民商法、労働法、公開会社法、破産法等が改正となった。これにより民商法1201条が改正され、従来期限の定めのなかった配当金の支払いについて、株主総会または取締役会において決議を行った場合、その決議日から1ヶ月以内に配当金の支払いを行わなければならない旨が規定された。尚、本規定に違反した場合、最大2万バーツの罰金が課されることとなる。
  2. フランスのタイヤ大手ミシュランとタイ国政府観光庁(TAT)は4月21日、12月にレストランやホテルの格付け本「ミシュランガイド・バンコク2018」を発行すると発表した。東南アジアではシンガポールに次ぐ2ヶ国目、全体では29番目のセクションとなる。ミシュランとTATは共同事業として5年間にわたり毎年ミシュランガイドを発行する予定で、投資額は410万ドル。ミシュランガイド発行により観光客の1日あたりの食費は現行の千バーツから10~15%増加する見込み。事業者がガイドブックへの掲載を目指すことで、食やサービスの質向上も期待出来るとしている。


当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。

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