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バックナンバー 2008-02

「日・タイ随想」

No.17 布施隆史 2008/02/01

タイでは肥満者は住みにくい?

JTBF会員:布施隆史

新聞の投書欄

タイの代表的英字紙がバンコク・ポスト(BP)とザ・ネーションであることはご承知の通りです。タイに10数年関わって来、今も関わっているにも拘らずタイ語が殆ど出来ない(怠慢です)筆者にとって、英字紙はタイに関する日々の情報を得るための必要不可欠なトゥールです。読み慣れていることもあって専らBP紙を読んでおり、日本にいる間も同紙のホームページをほぼ毎日覗いています。

多くの新聞同様、BP紙にも投書欄があり、ここに時折興味ある(時には突拍子もない)投書が掲載され、テーマによっては反論やその反論が掲載されて論争になったりします。残念なのは投書者の圧倒的多数が欧米人のようで(本名かペンネームかは不明ですが名前や文脈からそう思えます)、タイ人の投書が少ないことです。もっとも、大多数のタイ人は英字紙は読まないでしょうし、読んでも投書欄にまで目を通す人は余りいないでしょう。ましてや外国語が得意とはいえないタイ人にとって英語で投書するなどという行為にまで及ぶ人は「砂浜のダイヤモンド」状態であろうことを考えれば、タイ人の投書が少ないのは止むを得ないかも知れません。

必ず反論が来ると予測させる投書に時々遭遇しますが、昨年12月13日、次のような突拍子もない投書が掲載されました。これには必ず反論が来ると予想しましたが、案の定、15日・17日の2日にわたって計8本の反論が掲載されました。長年BPを読んでいますが、1本の投書に8本もの反論が掲載されるのを見たのは初めてです。ことによると投書欄の担当者も最初の投書に怒り、敢えて8本もの反論を載せたのかも知れません。


おデブの嘆き

投書者はチェンマイ在のスーザン・サットンという女性で、これが本名なら欧米人と思えます。相当なおデブのようで、次のような不満を漏らしました。

曰く、「タクシーは小さく、BTSや地下鉄の座席は狭く、オーバーサイズの女性にとってバンコクを旅するのは苦痛である。また、店にはこうした女性のための服はほとんど置いてなく、BP紙も我々の特別なニーズに取り組んだ記事を全く掲載しない。タイの女性は全て栄養失調のように見える。着ている服は嫌悪感を催すものであり、使っている化粧品も安っぽくベタベタしている。この問題を是非貴紙で報じて欲しい」。

サイズ問題からいきなりタイ人女性批判に飛躍し、デブの特別なニーズについて報じないBPはけしからんと新聞批判までしています。自分のデブさを棚に上げてまったく「よく言うよ」です。


ジャンクフード

スリーサイズが全て1メートル以上、ボンレスハムどころかドラム缶状態、乗り物で絶対に隣に来て欲しくない、メタボリスト(?)が可愛く見えるほどの太さの欧米人が多いのは事実です。電車やバスならそんなのが隣に来たら席を立てば済みますが、飛行機では満席ならそうは行きません。ファーストクラスやビジネスクラスなら座席幅がありますが、エコノミークラスでは逃げ場はなし、もう地獄です。東シナ海の中国の石油採掘リグみたいなもので、中間線をはみ出してこっちの領土が侵食され、到着するまで苦難を強いられます。

ハンバーガー、ホットドッグ、フライドポテト、コーラなどに代表されるジャンクフードを毎日飲食していれば不健康に太るのは当たり前ですが、訳の分からないのは、こうした連中が体重を落とそうと運動することです。円盤上での運動、昨年日本でも流行った「何とかブートキャンプ」、そして痩せるための様々な器具。これをやればこんな身体になりますよと、引き締まった体形を見せびらかすような男女によるパフォーマンスがテレビで紹介されていますが、これを見る度にいつも思うのです。ジャンクフードの摂取を抑制すればこんなことにエネルギーと時間と金を無駄使いすることもなかろうに、と。太る背景には体質や遺伝もあるのかも知れませんが、ああまで無様に太ってしまう最大の要因はやはり食べ物だろうと思います。食文化(ジャンクフードが食文化かという問題はあるでしょうが)は簡単に変えられるものではないかも知れませんが、それを変える工夫も努力もせず本能の赴くままにジャンクフードで太りまくり、自分の体形に合わないとタイを批判するのは本末転倒としか言いようがありません。


いやなら帰国すればいい

スーザン・サットンに対する反論投書者は、名前から見て全て欧米人のようです。全部を紹介できませんのでエッセンスを記載します。

それぞれの反論はまあまっとうな内容でしょう。むしろ最初の投書の内容が極端すぎ、BPがなぜかような投書を掲載したのか、ことによると販売部数を伸ばすためのヤラセではないかとの疑問すら浮かびますが、話題性は確かにありました。

8人の反論投書者の中にタイ人はいないようなので、彼らがスーザン・サットンの投書にどんな反応を示すか、次回タイに行ったら聞いてみようと思っています。

目立たない投書欄ですが、時々こんな面白い場面に出くわすこともありますので、時には目を通してみてはいかがでしょうか。