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日タイビジネスフォーラム (JTBF)

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タイ国に駐在経験のある日本人ビジネスマン(現役&OB)が個人の立場で参加しています。これまでの日本・タイ国両国におけるビジネス経験を生かし、両国間友好関係の促進に寄与したいと考えています。


sketched by H. Murata
Samila beach, Songkhla province


リレーエッセイ 第30回配信

2025年04月01日配信
JTBF 広報委員会

香港とタイの繋がり

 社会人として最後の海外駐在をタイで過ごしたかったのですが、20197月よりJTBFを一時休会し、香港に滞在していました。バンコクまでゴルフバックを担いで3時間のフライトも悪くないかと当初は目論んでいましたが、実際はコロナウィルスの蔓延に伴う厳しい検疫措置に阻まれました。ところが、香港に住んでみると、実はタイと縁深い地であると、日を追う毎に実感するようになりました。

 

 さて、私が着任する1カ月前より「反逃亡犯条例デモ」(通称、反政府デモ)と称される社会騒乱が発生。デモは徐々に暴徒化し、空港が占拠されて運営不能に陥ったり地下鉄駅が破壊・放火されたり、市民生活にも支障をきたすようになりました。そのような中で影響を被っている日系企業の声を取り纏めて、香港政府に対応を促す運びとなりました。私も日本総領事と共に、商務及経済発展局長官への説明に務めましたが、より政権中枢へのアプローチを模索する中で、行政長官の後見人でもあり閣議招集人であるバーナード・チャーンワット・チャン氏への接触を試みようとしました。

 バーナード氏は、ミドルネームから判るようにタイ系であり、祖父はバンコク銀行創業者のチン・ソーポンパニット氏です。チン氏は、50年代後半にサリット軍政に追われ香港へ政治亡命し、同郷の潮州系華人と金融業を中心にビジネスを興し、タイ復帰に際して香港でのビジネスを長男家に引き継いだそうです。

 さて、そのバーナード氏がタイ系であると知るや、早速、タイ商務省から派遣されている通商代表にコンタクトを取ると、二つ返事で仲介を引き受けてくれ、以降、何度かお目にかかりました。後日、キャリー・ラム行政長官(当時)を招き日系社会で話を伺う機会があり、その発言の中で我々の提言が言及されており、バーナード氏経由の陳情が功を奏したかは不明ですが日系企業の声を届けることは出来たようです。

 

 先ほど潮州系華人と記載をしましたが、香港華人の出自は様々です。人種別人口構成では単に「中国人」91.6%とありますが、興味深いのは常用・会話可能言語では北京語が54.2%にとどまり、方言とされる広東語が93.7%と圧倒し、客家語、福建語、潮州語、上海語の話者も散見されます。私のアシスタントは深圳市出身者でしたが、家庭内では両親と客家語を使っているということでした。

 なお、香港在住のタイ人は1.3万人と日本人をやや上回り、フィリピン人(20万人)、インドネシア人(14万人)に数では及びませんが、料理が上手だとハウスメイドとしても人気があるようです。タイ料理レストランは400店舗を数え、中華、和食に次ぐ店舗数となっています。これに加えて、潮州系の中華レストランではタイ料理のルーツとも言える品々に出会えます。

 

 ところで、厳しいコロナ禍の渡航制限の中でメンタルヘルス専門医師は在留邦人向けのセミナーで「日本食を食べなさい」と指導をしておりました。ただ、私と家内にとっては、「タイ料理」と「シンハービール」が救いとなったようで、東京都の半分程度の地に閉ざされていても精神的な健全さが保てていたようです。

(注)人口統計は、香港政府統計局発行「人口センサス2021年版」(5年毎に更新)に基づく。なお、総人口はセンサス実施時点では741万人、24年央の推計値は753万人。

高島大浩 日本貿易振興機構(ジェトロ)理事、元ジェトロバンコク事務所勤務(200412月-20087月)

 


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