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タイ国経済概況(2025年9月)

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1.景気動向

(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の8月18日に発表によると、2025年第2四半期の経済成長率は前年同期比+2.8%となり、前期(第1四半期)の+3.2%(改定値)から減速した。業種別に見ると、農業は前年同期比+6.0%と、前期の+6.2%から引き続き堅調に推移。製造業も+0.8%と、前期の+0.4%からやや加速した。一方、サービス業は観光需要の伸び悩みを受けて+3.5%となり、前期の+4.1%からさらに減速した。2025年上半期の経済成長率は+3.0%だった。また、同委員会による2025年通年の成長率見通しは、米国との相互関税や家計債務の高止まりによる影響が続くものの、公共投資支出の増加および民間投資の回復が見込まれることから、+1.8~2.3%と、前回予想からレンジを絞って上方修正された。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が8月25日に発表した2025年7月の自動車生産台数は、前年同月比▲11.4%の11.1万台で、3ヵ月ぶりのマイナスを記録した。内訳は国内向けが同▲2.1%の3.7万台、輸出向けが同▲15.4%の7.4万台。また、2025年7月の国内新車販売台数は同+5.8%の4.9万台で、輸出台数は同▲13.3%の7.2万台だった。
 
(3) FTIが8月25日に発表した2025年7月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+12.6%の20.2万台で、6ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+9.5%の16.5万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+29.6%の3.7万台。また、同月の国内販売台数は同+2.1%の14.4万台、輸出台数は同+21.3%の7.1万台だった。
 
(4) タイ中央銀行(BOT)が8月29日に公表した7月の経済・金融報告によると、タイ経済は前月比で減速したことが示された。観光業は、国内および外国人観光客市場の縮小により観光収入が減少し、それに伴ってサービス業全体も鈍化した。製造業は、製油所のメンテナンスや自動車製造ラインの調整により一時的に減少したが、これらの一時要因を除くと改善傾向を示した。また、物品輸出は増加した。民間消費は横ばいで推移したものの、消費者信頼感の低下が続いており、消費の下振れ要因が依然として残っている。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)は8月8日、再生可能エネルギー(風力発電)、タイヤ用鋼線、ペットフード製造の3分野において、総額269億バーツの投資を承認した。BOIのナリット長官は、「今回承認されたプロジェクトは、タイ経済の成長性に対する国内外からの信頼を反映している」「特に、クリーンエネルギー分野における大手電力会社の投資は、非常に意義深い」とコメントした。タイ政府は、2037年までに総発電量の50%を再生可能エネルギーで賄うことを目標に、同分野の供給拡大を積極的に推進している。
また米関税問題については、7月31日に当初予定されていた36%から19%に引き下げられた。8月1日、BOIナリット長官は「米国の関税引き下げは、グローバルサプライチェーンにおいてタイが信頼性および質の高い貿易パートナーであると認識された結果」「貿易協定が整ったことで、タイは新たな投資を呼び込み、雇用を創出し、国際的な経済協力をさらに深める立場にある。」とし、タイの優位性と整備された投資環境を活かして持続可能な成長を目指す姿勢を示した。
 
(2)7月23日、第12回日タイ経済連携協定(JTEPA)ビジネス環境整備小委員会(EBE)が開催され、日系企業のタイにおけるビジネス環境改善に向け、幅広い課題について協議が行われた。主な協議内容としては、①税制-電子化対応、②出入国管理-ビザ・在留許可の手続き改善、③知的財産-特許・商標登録の審査遅延の解消に向けた制度改革、④インフラ・物流-鉄道網拡張、レムチャバン港の改良、空港貨物ターミナルの拡充等。なお、タイ政府は、ラートクラバンICDとレムチャバン港間の鉄道輸送比率を、2024年の36.4%から50%へ引き上げることを目標としている。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、7月末時点での金融機関預金残高は26兆330億バーツ(前年同月比+3.4%)、貸金残高は30兆4,470億バーツ(同+0.1%)。また、政策金利は8月13日に1.75%から1.50%に引き下げられた。

4. 政治動向、その他

憲法裁判所は8月29日、7月から職務停止となっていたタイ貢献党所属のぺートンターン首相に対し、解任を命じた。これは、6月に流出したタイ-カンボジア国境問題に関するフン・セン氏との非公式通話の内容が、重大な倫理違反にあたると判断されたためである。これを受け、野党第一党の国民党はタイ誇り党と、所信表明後4ヵ月以内の下院解散や現行憲法の改正等を含む条件が記された戦略的合意覚書(MOA)を締結。国民党は、この合意に基づき、タイ誇り党から擁立されたアヌティン・チャーンウィラクーン氏への投票を表明した。9月5日、下院での首相選出選挙においてアヌティン氏は、国民党による投票を含めた過半数の支持を獲得し、新首相に選出された。さらに9月7日には、ワチラロンコン国王の承認を受け、正式にタイ第32代首相に就任した。現政権では、MOAに基づき国民党は連立に参加せず、与党第一党であったタイ貢献党が下野した結果、少数与党政権が発足することになる。9月9日時点で、アヌティン首相は今後4ヵ月間で、家計債務を含む経済問題、カンボジアとの国境問題、自然災害、麻薬・詐欺等の社会問題に対応する計画を立てている。なお、閣僚については現在、候補者の資格確認が進められている。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2025年9月10日)