1.景気動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は2025年上半期の投資申請額が前年同期比+139%の1.06兆バーツ(325億ドル相当)となり、過去最高を記録したと発表。デジタル分野は5,226億バーツと20倍に跳ね上がり、電気・電子(E&E)や鉄道インフラ等もけん引した。デジタル分野ではデータセンター関連が28件、5,212億バーツ、E&E分野は1,258億バーツ(前年比▲9%)だが、申請件数は268件(同+51%)で、特にバッテリー関連が活発。鉄道インフラは、オレンジライン建設が1,092億バーツとなった。海外直接投資(FDI)は、1,369件(同+59%)、7,376億バーツ(同+132%)で全体投資額の約70%を占める。国別の投資金額と上位投資元は、シンガポール2,470億バーツ(主にデジタル、E&E)、香港2,186億バーツ(デジタル、E&E)、中国1,023億バーツ(E&E、石油化学・化学)、英国937億バーツ(主にデジタル、自動車)、日本498億バーツ(主に自動車、E&E)。ナリットBOI長官は、「高付加価値・ハイテク産業に焦点を当てた戦略が成果を上げてきており、投資家の信頼を得ている。2025年は2024年を超える結果が期待できる」とコメントした。
(2) タイ工業連盟(FTI)が7月24日に発表した2025年6月の自動車生産台数は、前年同月比+12.0%の13.0万台で、2ヵ月続けてのプラスとなった。内訳は国内向けが同+31.2%の4.5万台、輸出向けが同+3.9%の8.5万台。また、2025年6月の国内新車販売台数は同+5.1%の5.0万台であった。さらに、MarkLinesによると輸出台数は同▲1.1%の8.8万台だった。
(3) FTIが7月24日に発表した2025年6月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+12.0%の20.6万台で、5ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+12.5%の17.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+9.3%の2.9万台。また、同月の国内販売台数は同+2.5%の15.4万台、輸出台数は同+30.9%の3.6万台だった。
(4) 7月31日にタイ中銀が公表した6月の経済・金融報告によると、タイ経済は前月比減速したことが示された。製造業および物品輸出は前月に加速したものの、6月は減速となった。また、観光業も外国人観光者数および消費額の減少により鈍化した。民間消費も消費者信頼感の低下を背景に減少した。一方、政府支出は増加しており、民間投資も機械・設備への投資により増加となった。
2. 投資動向
(1) タイ投資委員会(BOI)は2025年上半期の投資申請額が前年同期比+139%の1.06兆バーツ(325億ドル相当)となり、過去最高を記録したと発表。デジタル分野は5,226億バーツと20倍に跳ね上がり、電気・電子(E&E)や鉄道インフラ等もけん引した。デジタル分野ではデータセンター関連が28件、5,212億バーツ、E&E分野は1,258億バーツ(前年比▲9%)だが、申請件数は268件(同+51%)で、特にバッテリー関連が活発。鉄道インフラは、オレンジライン建設が1,092億バーツとなった。海外直接投資(FDI)は、1,369件(同+59%)、7,376億バーツ(同+132%)で全体投資額の約70%を占める。国別の投資金額と上位投資元は、シンガポール2,470億バーツ(主にデジタル、E&E)、香港2,186億バーツ(デジタル、E&E)、中国1,023億バーツ(E&E、石油化学・化学)、英国937億バーツ(主にデジタル、自動車)、日本498億バーツ(主に自動車、E&E)。ナリットBOI長官は、「高付加価値・ハイテク産業に焦点を当てた戦略が成果を上げてきており、投資家の信頼を得ている。2025年は2024年を超える結果が期待できる」とコメントした。
(2)BOIは7月16日、激化する貿易摩擦への対応として、タイ企業の競争力強化に向けた包括的措置の導入を発表した。今回の措置は、タイ企業、特に部品およびコンポーネント分野の競争力を高めるとともに、サプライチェーンの安定性を確保し、国内外における市場拡大およびプレゼンスの向上を図るもの。主な措置としては、①EVおよび電機産業の国内サプライチェーンの強化、②米関税問題による影響が懸念される産業における製造プロセス評価基準の厳格化、③特定産業における投資規制の見直しによる国内産業の保護と健全な競争環境の確保、④外国人専門人材の受け入れ条件見直しによるタイ人雇用および技術移転の促進。ナリットBOI長官は、「グローバルな貿易環境の急変に対応し、既存産業の高度化と新たな産業基盤の形成を通じて、タイの成長エンジンを強化することが必要であり、今後も戦略的な投資政策を推進していく」とコメントした。
3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、6月末時点での金融機関預金残高は25兆8,880億バーツ(前年同月比+2.9%)、貸金残高は30兆6,320億バーツ(同+0.8%)。
4. 政治動向、その他
(1) タイとカンボジアは7月28日、7月24日朝に始まった国境での軍事衝突について、29日の0時から無条件で停戦することで合意した。東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であるマレーシアが停戦を仲介し、米国および中国の代表者も参加した。8月2日時点のタイ陸軍の報告によると、死者が32人(うち民間人17人)、負傷者が237人(うち民間人38人)、避難者は約19万人とされている。タイ-カンボジア国境の状況は、2025年5月末ごろから悪化しており、6月24日からは国境が封鎖された。その影響で、6月のカンボジアとの国境貿易額が前年同月比▲23.3%の109億バーツとなった。報道によると、カンボジアと取引のあるタイ企業や日系企業は空輸、海上輸送、ラオス経由の陸路輸送を活用し、物流の確保に努めている。
(2) 8月5日の観光・スポーツ省の発表によると、2025年7月の訪タイ外国人観光者数は前年同月比▲15.9%の261.0万人で、6ヵ月連続のマイナスとなった。国別にみると、中国が42.1万人(同▲38.9%)でトップとなり、マレーシアの35.8万人(同▲16.3%)、インドの18.9万人(同+19.3%)と続いた。日本は9位で、7.4万人(同▲1.2%)だった。2025年1~7月の訪タイ外国人観光者数は前年同期比▲6.4%の1,929.6万人。中国が同▲34.9%の268.6万人で、首位ではあるものの、2月から大幅に減少している。日本は9位で、58.4万人(同+6.9%)だった。観光収入額は同▲4.2%の8,951.6億バーツだった。また、中国からの観光者の減少および観光市場全体の縮小の対応で、7月21日にタイ国政府観光庁(TAT)はタイ観光の質を重視し、高価値市場の国からの観光者を誘致する観光戦略を発表した。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
(2025年8月10日)
