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タイ国経済概況(2024年6月)

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1.景気動向

(1) タイ商務省が5月3日に発表した2024年4月の消費者物価指数(CPI)は108.16となり、前年同月比+0.19%であった。この数値は7カ月ぶりのプラスであり、エネルギー関連の値下がりの影響から一旦抑制されていた物価上昇圧力が再び高まったことを示唆している。前年の一時的な電気代値下げ政策の効果が薄れ、インフレ基調への回帰が窺える。
 
(2) 工業連盟(FTI)が5月23日に発表した4月の自動車生産台数は、前年同月比▲11.0%の10.5万台だった。内訳は国内向けが同▲34.2%の3.3万台、輸出向けが同+5.9%の7.2万台。新型コロナ前の2019年4月の生産台数15.0万台を下回った。また、4月の国内新車販売台数は同▲21.5%の4.7万台で、輸出台数は同▲12.2%の7.0万台。新型コロナ前の2019年4月の販売台数が8.6万台、輸出台数が6.7万台であり、販売台数は新型コロナ前の水準を下回った。
 
(3) FTIが5月23日に発表した4月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲4.4%の16.2万台で、10ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年4月の生産台数は16.9万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲2.9%の13.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲11.5%の2.6万台。また、4月の国内販売台数は同+2.6%の12.7万台、輸出台数は同▲19.6%の2.6万台だった。2019年4月の販売台数が12.0万台、輸出台数が2.4万台であり、販売台数と輸出台数のいずれも新型コロナ前の水準を上回った。
 
(4) タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の5月20日発表によると、2024年第1四半期の経済成長率は、前年同期比+1.5%であり、東南アジア主要国で最も低い伸び率となった。内訳では、サービス業が観光需要の持ち直しで+11.8%(宿泊・サービス)と好調だったが、製造業は▲3%強、農業も▲3.5%と低迷した。輸出は▲0.2%、自動車生産・販売も不振が続いている。新政権発足後の2024年度予算執行が進むなか、民間支出は増えたものの公共投資が▲27.7%となるなど、財政出動の遅れが経済に影響したとみられる。タイ経済は徐々に持ち直しつつあるものの、製造業の停滞、輸出の低迷、公共投資の減少などが重しとなり、力強い回復には至っていない状況にある。

2. 投資動向

(1) 5月2日付のタイ投資委員会(BOI)の発表によると、2024年第1四半期の投資申請は724件で、投資総額は前年同期比+31%の2,282億バーツだった。産業別1位は投資総額772億バーツのエレクトロニクスおよび電気製品で、2位は213億バーツの自動車および部品、3位は177億バーツの石油化学および化学品だった。投資申請のうちFDIは前年同期比+16%の1,693億バーツ(460件)となり、申請総額の64%を占めた。金額で国別1位は電子回路基板(PCB)の製造で大規模投資があった総額425億バーツのシンガポール、2位は347億バーツの中国、3位は266億バーツの香港だった。日本は件数では4位、金額では6位だった。また、投資申請のうち産業高度化措置に基づく投資額は前年同期比+28%の5,713百万バーツだった。
 
(2) 5月30日付のBOIの発表によると、現在、56,000人以上の外国人がタイでの就労と滞在を許可されている。そのうちスマートビザによるものが2,170人、タイ長期居住者プログラム(LTRビザ)によるものが4,000人以上となっている。スマートビザは、技術やイノベーションを原動力とする産業やスタートアップを支援し、高度人材を誘致するためのビザである。承認件数の多い国は、米国、ロシア、英国、日本、ドイツとなっている。LTRビザは、タイに有望な外国人を誘致するため、個人所得税率を17%とする等の恩典を付与するものである。国別の承認件数は、米国が791件で最多、次いでロシア(479件)、英国(332件)、中国(277件)、ドイツ(236件)、日本(207件)、フランス(198件)となっている。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の4月末時点で金融機関預金残高は25兆2,115億バーツ(前年同月比+2.2%)、貸金残高は30兆8,834億バーツ(同+2.3%)といずれも増加。政策金利は2.5%に据え置かれた。

4. 政治動向、その他

(1) タイの選挙管理委員会は、6月に実施される上院議員選挙において、4万8,226人が立候補を届け出たと発表した。選挙管理委員会は、10万人以上が立候補すると予想していたものの、その半数に満たなかったとバンコクポストが5月25日に報じた。立候補者が予想を大幅に下回った理由として、立候補の条件が厳しいことや選挙の仕組みが複雑であることが挙げられている。立候補届は20日から24日に受け付けられ、内務省地方行政局によると、4万8,226人のうち4万8,117人が全ての条件を満たしていた。一部の条件を満たしていない候補者については、29日までに再審査が行われる予定。上院の定数は200となり、250から削減される。選出方法も前回の任命制から変更され、20の専門分野グループに分けて立候補を受け付け、郡、都・県、国レベルの3段階で候補者による互選を行い、最終的に20のグループからそれぞれ10人ずつ計200人を選出。立候補届を確認した結果、多くの選挙区の専門分野グループで候補者不足が判明している。7つの選挙区では1つのグループしか候補者がおらず、2つの選挙区では候補者がゼロだった。サワン事務局長は、立候補者不足の選挙区があっても、選挙は問題なく実施できると説明している。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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