1.景気動向
(1) タイ工業経済事務局(OIE)の9月26日の発表によると、2024年8月の付加価値ベースの鉱工業生産指数(MPI)は95.08で、前年同月比で引き続きマイナスとなっている。特に「車両・トレーラー」が家計債務の拡大で購買力が落ちていることから、前年同月比▲18.0%となり、下落率が最も大きい。MPIの下落原因としては、ディーゼル価格の上昇および北部での洪水が挙げられる。同事務局はMPI成長率の2024年通年予測値を5月30日の予測値から▲1.0~0.0%に、工業GDP成長率を▲0.5~+0.5%に下方修正した。
(2) 工業連盟(FTI)が9月24日に発表した8月の自動車生産台数は、前年同月比▲20.6%の12.0万台だった。内訳は国内向けが同▲40.5%の3.7万台、輸出向けが同▲6.6%の8.3万台。新型コロナ前の2019年8月の生産台数16.6万台を下回った。また、8月の国内新車販売台数は同▲25.0%の4.5万台で、輸出台数は同▲1.7%の8.6万台。新型コロナ前の2019年8月の販売台数が8.1万台、輸出台数が8.2万台であり、国内販売台数は大幅減であるものの、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。
(3) FTIが9月24日に発表した8月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲8.0%の17.2万台で、14ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年8月の生産台数は19.9万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲15.8%の14.4万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+77.7%の2.8万台。また、8月の国内販売台数は同▲17.7%の13.2万台、輸出台数は同▲3.9%の3.1万台だった。2019年8月の販売台数が14.9万台、輸出台数が2.7万台であり、国内販売台数は大幅減であるものの、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。
(4) エネルギー政策計画事務局(EPPO)の発表によると、2024年上半期のタイのエネルギー消費による二酸化炭素(CO2)排出量は前年同期比▲2.5%の1億2,190万トンで、2023年から減少傾向が続いている。燃料別の排出量はいずれも減少しており、石炭が同▲7.9%(2,890万トン)で減少率が最も大きい。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年のタイのエネルギー単位当たりの排出量は欧州の平均より高いものの、世界平均や亜州(中国除く)の平均よりも低い。同局もクリーンエネルギー源の割合を上げCO2排出量削減方向でエネルギー開発計画の改定を進めている。
2. 投資動向
(1) 9月24日、日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所は開設70周年記念フォーラムを開催し、その中で東部経済回廊(EEC)事務局との協力覚書を更新したことを発表した。今回の更新では、特に日本のハイテク産業およびBCG産業の投資家がEEC域内へ投資することを奨励する内容が盛り込まれた。また、同事務所はタイ投資委員会(BOI)とも協力覚書を更新したほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)バンコク事務所と新たに連携協力協定を締結した。
(2) 10月2日にBOIは、データセンターおよびクラウドサービス事業における投資申請件数は合計46プロジェクトで、投資額は1,679億8,900万バーツ相当であることを発表した。BOIのナリット長官は、大手インターネット関連企業がタイでのデータセンターとクラウド構築に投資する計画を発表したことに関し、第1段階の投資額は10億米ドル(約360億バーツ)あることを明らかにした。また、次の通りタイへ投資することの利点を述べた。1.高速インターネットネットや電力システムを含めたインフラの質が高いこと、2.ASEAN地域の各国と接続できる中心的な立地、3.デジタルスキルを備えた優秀な人材、4.政府のデジタル推進、5.高度なスキルを持つ海外人材向けのビザ発給等の恩典。
3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の8月末時点で金融機関預金残高は24兆9,782億バーツ(前年同月比+2.1%)、貸金残高は30兆7,565億バーツ(同+1.0%)といずれも増加。政策金利は2.5%に据え置かれた。
4. 政治動向、その他
(1) タイ財務省が9月25日~30日に、1万バーツ配布第1弾を経済刺激策として行った。対象者は福祉カードを持つ脆弱者および障害者(計1,450万人)。QRコード決済システム「プロンプトペイ」経由の配布で、約1,405万人に振込完了した。一方で、約38万人が受給できず、受給失敗の原因は主にプロンプトペイと銀行口座の未連携や口座解約であった。財務副大臣のパオプーム氏は、この政策で通年の国内総生産(GDP)成長率が0.3%引き上がると述べた。第2弾配布については、予算は確保されたが、配布時期等の詳細は10月9日現在では未定。
(2) タイ北部を中心とした洪水は一時的に回復したが、9月に発生した台風「ヤギ」(日本:台風11号)および台風「ソーリック」(日本:台風15号)の影響で再び悪化した。10月8日までのタイ各地の洪水で、死亡者52人、被災者24万1,482世帯に上るとされている。タイ商工会議所によると、8月中旬からの洪水損害額は9月28日の時点で、国内総生産(GDP)の0.17%相当の298億バーツに達するとの見通しを発表した。農業の損害が損害額の82.3%を占め、約246億バーツだった。チャオプラヤー水系の下流のバンコク都でも10月6日にチャオプラヤー川の水位上昇を受け、警戒強化を始めた。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。