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バックナンバー 2008-12

「日・タイ随想」

No.27 2008/12/01

今こそ、タイ食品の安全!安心!を世界の消費者に届ける絶好の機会!

JTBF会員:本村 博志
2008/12/01

  最近の日本の消費者の中国輸入食品に対するアレルギーは、留まるところを知らない。それもその筈、このところ、あまりにショッキングなニュースの連続である。記憶に新しいところで、汚染粉ミルク事件。タンパク含有量を多く見せかける為、何と「メラミン」を混ぜるのだ。腎臓結石を招来すると言う。金儲けの為、酪農家やブローカーが暗躍し、行政も黙認する。半ば構造的な構図が出来上がっていたようだ。中国国民は、5万人以上が健康被害を受け、数名が死亡しているといわれている。メラミン入りの牛乳・ヨーグルト・アイスクリーム等々の製品回収など、日本でも相当な被害を蒙った事例は数え切れない。メタミドホス入り肉まん、有機リン系殺虫剤入り冷凍餃子、段ボール肉まん、排水溝に溜まった油を再利用した即席麺・・・・・枚挙に暇が無い。

  今や、日本における冷凍食品消費量は、‘07年で267万トンに達し、30年前の約6倍と急増、国民一人当たり消費量も20.9kgになったという。その114万トンが輸入され、その42%が中国からである、と日本冷凍食品協会の資料は語っている。

  当然、これに伴って、抗生物質・抗菌剤・残留農薬などで汚染された食品を食する危険も増大し、日本の消費者の食の安全が脅かされている。こんな状況は、考え様によっては、タイ産品の日本市場浸透の絶好の機会ではないか。こんな好機なのに、何故もっと、この「安心・安全」を強烈に前面に出した、タイ食品売り込みのマーケティングをしないのであろう?単にまだ、その段階に至っていないのだろうか?年に一度、世界各国から集まるバイヤー等をターゲットにした「Foodex」などは、恰好の絶好の機会であり、これを捉えたアピールを何故積極的に実行しないのか、と近時、慨嘆しているタイ好き人間の一人である。

  この数年、確かに「Foodex」におけるタイ国のブースは「Kitchen of the World」と銘打って世界の消費者に向けて、世界に通用するタイ食材の売込・宣伝に力を入れていることは、事実である。本年春の例では、ミスタイランドを招聘し、タイの代表的レシピを来場者に提供していたことは、ここ数年見られなかったことで、少なからず売込の強い意気込みを感ずる。嘗ては、タイ産品の缶詰や麺などの加工品をただ単に陳列しているだけの訴求力のないブースが軒を連ね、来場者は素通りするため、手持ち無沙汰の係員がお喋りをして、時を過ごしていた光景をよく目にしたものである。隣のベトナムのブースでは、産出する海老をその場で天婦羅にして、アオザイ姿の美人が「どうぞ召し上がれ!」と微笑を振りまくという光景とは対象的であった。この1~2年の例では、タイ側も力を入れ始め、ブースの占めるスペースや広告塔は立派になったものの、その内容は未だに訴求力に欠けると言わざるを得ない。折角、ミスタイランドを招聘しても、タイ食材を紹介するイベントは、関係する日本の業者にお任せのようにも見受けられた。招待者のみの特別エリアでのお披露目では、さしたる効果は望めまい。

  昨今、日本における中国からの冷凍・加工食品の輸入は年々急増していることは前述のとおり。この急増に伴って、汚染食品も急増中。然は然り乍ら、これら輸入食品なしには、日本は、既に立ち行かなくなっていることも之また事実。日本の消費者の中国食品に対するアレルギーは、今のところ、留まるところを知らない(但し、熱しやすく、冷めやすい消費者心理は片方にあるが)。スーパーで「原産地・中国」と表示されているだけで、如何に安価であっても敬遠する主婦が著増している。ために、最近の例では、「国産」と偽装した中国産鰻が出回る始末である。消費者の「国産」への信頼を悪用した商道徳に悖る行為であるが、これは、日本製食品がより「安全」で「安心」できるという一般的通念がある故であろう。国産でも「ミートホープ」事件、吉兆事件、赤福事件等々国産食品への信頼を失わせる事例には、近時、事欠かないが、金儲け至上主義に走る浅はかな経営者を見るにつけ、日本の商道徳も何と劣化したことかと、嘆くのは筆者だけではあるまい。

  こういう状況であるからこそ、タイ側は、官民あげて食の安全・安心を担保する政策を実行することが、究極の日本そして世界の消費者の心を掴む近道であると確信している。インドネシアで実施されている養殖エビの安全と安心を得るための努力例を紹介しておこう。潮の干満のある淡水と海水とが入り混じる地域に養殖池を設け、抗生物質や抗菌剤など一切使わず、繁茂する藻や水草、ここに発生するプランクトンを餌にするもの。乾季には、池を干して日光消毒し、そこに水を入れて水草を繁茂させる。この後、更に水を抜き、水草を発酵させ、堆肥化させ、そこに水を入れると、大量のプランクトンが発生する。こうして育てられたエビが、安全と安心を担保するものとして、日本の消費者に人気が有るという。(「食べるな、危険」による)

  このように、民間自らの努力により、徹底した安全対策をアピールする例もあるが、今後、タイ側としても、問題意識の高い政府関係部署が中心となって、日本、世界において、これら食品の安全性を長年検査して高度の信頼を勝ち得ている機関とタイアップするなどして、権威ある第3者検査検証機関を設立するなどして実績を積み重ね、一度この検証を得られたら、「安全・安心」を担保するものとして、日本はもとより世界で受け入れられる、高度に安全な高品質の食品であるという消費者の「評価」に繋がるビジネスモデルが構築されれば、タイの食品は、正に真の「Kitchen of the world」と言えるのではなかろうか。

  このような好機にこそ、上記のような食の安全に対する地道な努力を、確実に継続的に実施している姿をアピールすることが、Foodex 展示の大きなポイントの一つになれば、タイ食品の未来はこの上なく明るいものとなると断言できる。何故って? それは、そうでしょう、タイの食品は絶対的に「OISHII」のですから。


(元 東京三菱銀行バンコク支店長)