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バックナンバー 2011-10

「私がおすすめするタイの旅」

卯年72歳 「元気かい」 北部タイの旅 その2

寄稿 鈴木俊男
監修 水谷和正(JTBF会員)
2011/10/01

第2日目(2010年12月10日)

ドイアンカーン(Doi Ang Khang)--40km--ファン(Fang)--20km--タナトン(Thanaton)--60km--ドイメーサロン(Doi Mae Salong)--80km--ドイトゥン(Doi Tung)--60km--メーサイ(Mae Sai)--80km--ゴールデントライアングル(Golden Triangle) メコン


  7時2O分出発。山また山の中に切り開かれた道路(すべて舗装されている)をゴールデントライアングルヘ。道の片側は山高く、反対側は深い谷。運転を誤れば勿論命はない。そのような道路が蛇がのた打ち回るような曲線を描きながら延々と続く。その深い山々の山腹に人の手のはいっている箇所が意外に多くある。マンゴ一畑だ。時々山肌にへばりつくように数軒の家が現れては後ろに流れて行く。いい加減山中行に飽きたころ、1O7号線へ。途端に道路の両側にしやれた家並みが続くようになった。
  昨晩宿泊したドイアンカーンを含め、ここミャンマーとの国境地帯は 1600-2300mの山が連なり、これら一帯がドイ パ ホム ポック国立公園に指定され、豊かな自然が保護されている。途中、公園内にあり間欠泉で有名なファーン温泉で一休みした後、北上し、先の大戦で中国雲南省から共産党に追われ敗走し、ビルマとタイとの国境に落ち着いた国民党の村ドイメーサローンを目ざす。道路の両側に広がる田畑には水牛。

ファンの間欠泉


  途中、タイ最大のオレンジ農園タナトン(地名でもある)を見学。タナトン所有のバスで園内一周。見学客を乗せた数台のバスがひっきりなしに行き来している。タナトンはタイ国内に8つの大農園を有し、オレンジをアジア各国、カナダ、フイリッピン等に輸出しているのだとか(日本の名前はなかった)。

タイ最大のタナトンのオレンジ農園


  10時25分、農園出発。ドイメーサローンでトゥアン シーワング(段奇文)将軍の墓に詣でる。毛沢東軍に破れ、諸方に散った蒋介石軍の残党のぅち、段将軍に率いられた400人はこの地に落ちのび、先住の少数民族アカ族と融和し住み着いた。「20年前に来たときは粗末な家、舗装されていない道路の貧しい寒村だった」(フアット氏)が、現在は近代建築が立ち並び裕福そうな町に変身している。この市場は店の数も、売っている品物も実に多い。日本で言えば、浅草の仲見世というところか。いかにも中国人村らしいにぎやかさである。

(左)ドイメーサローン、(右)トゥアン将軍の墓


  すぐ近くに、クリエンサック元タイ首相の別荘があるというのでいってみる。村を一望できる高台にそれはあり、今は周辺一帯が貸し別荘となっている。景色が最高である。段将軍と首相は大変意気があったと聞く。大好きなブランディーを飲みながら二人は何を語り合っていたのだろうか。一角にあるレストラン「さくら」の雲南料理で昼食をとる。

(左)クリエンサック 元タイ首相の別荘、(右)さくら雲南料理店


  12時35分、ドイトゥン ロイヤルヴィラへ。この頃から厚い雲が空を覆い始める。道路の周囲は茶畑。
  たまたま本日、タイは連休にあたり、観光地としてつとに有名なドイトゥンの山頂庭園は大型観光バスの連なる人又人の大混雑。我々はそれを避けてさらに登って山のもっとも高いところにある、ロイヤルヴィラへ直行。ここからの一望はすぼらしく、特にミャンマー方面の山の見晴らしは秀逸であった。ロイヤルヴィラは王の母親が生前常時住んでいたところ。母親は4年前に亡くなられているが、生前、国民に尊敬を受けていた方で、今でも人気が高く訪れる人が絶えないのだという。王母様は生前、この一帯の少数民族による麻薬栽培の撲滅に力を尽くされた方であり、栽培に代わる生活の糧として多くの産業をこの地に興した。ドイトゥンは王室財団メイファールアン財団の総本山である。残念ながらゆっくり見るにはあまりにも混雑した日にぶつかってしまった。

ドイトゥン頂上のロイヤルヴィラ


  15時50分、ミャンマーとの国境の町メ-サイヘ。山道を走ること20分で107号線へ。左側にうっすらと煙って山々が連なっている。国境の橋に近づくにつれて雰囲気がガラッと変わる。特に橋までの150-200m は。露天が道路に二重にはみ出し、喧騒の極み。この騒ぎが道路の両側で起こっているのだ。衣類、食べ物、宝飾品から仏具にいたるまでありとあらゆる品物が溢れかえり、そこに人が群がっている。年末のアメ横が両側に展開されているようだ。
  国境の川、サ一イ川に架かる橋を渡りミャンマーに入国するのには、まずパスポートを預け500バーツを払う。すると終日有効のビザが発行され、国境地点から5km以内はミャンマー国内を自由に歩くことができるのだが、我々は時間の関係でミャンマー入国をパス、本日最終の目的地ゴールデントライアングルヘ。空は完全に曇ってしまう。今回の旅のハイライト、「タイ側からメコン川に映る夕日を撮る」ことに対しメンバーの間に不安が広がる。

タイとミャンマーの国境の町、タイ最北端の町メーサイ


  バスが走り出して数分、突如、舗装が途切れ、赤土むき出しの道に変わる。前を走る車の巻き上げる土煙でわずか10m先が霞んでしまう。これは観光道路としても、生活道路としても最悪だ。こんな道を30分以上は走っただろうか、やっと舗装道路へ。とすぐにゴールデントライアングルだ。しかし空は完全に曇っていてメコンの夕日撮影はこの天気では断念せざるを得なかった。もうひとつ、現場に来て再認識したことは、たとえ晴れていても、ここトライアングルではタイ側からメコンに映える夕日を撮ることは難しいということ。この点M君は用意周到、数少ないタイ側からの撮影ポイントを事前に相当調査を済ましていたようで残念がること可愛そうなくらいであった。ここゴールデントライアングルも大勢の見物客でにぎわっているが、なんとも雑然としている。胸の大きな仏像、船を模した建物、なぜあるか分からない門、途切れなく流れるスピーカーからの音等、何か日本の田舎の温泉町の雰囲気。小雨の中メコン川を見下ろす高台にあるインペリアルトライアングルホテルに投宿。


その2 おわり