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バックナンバー 2012-07

「フラッシュバックタイランド」
タイ国日本人商工会議所「所報」より転載

~元タイ駐在員のその後~ 第2回

JTBF会長: 北山禎介
2012/7/01

 私は1995 年6 月から97 年7 月初めまでの2 年間さくら銀行( 現三井住友銀行)バンコック支店長としてタイに駐在しました。当行のバンコック支店は邦銀中最も歴史が永く1952 年帝国銀行(2 年後に三井銀行へ改称) バンコック支店として開設されましたので来年2012 年で還暦の60 周年を迎えることとなります。数多い海外支店・現地法人の中でも有力な主要拠点であり、これも日タイ両国間の緊密な関係をベースとした多くの日系企業の皆様に支えていただいた賜物と改めまして厚く御礼申し上げる次第です。

 当行バンコック支店は今はサトーンとラマ4 世通りの交差点にありますが、私が駐在した頃はシーロム通りのバンコック銀行本店の真向い、ブーンミットビルにありました。95 年と言えば春頃にドル円相場が80円を一時切り79 円台をつけたちょうど今と同じような円高局面であり、プラザ合意以降の日本企業の海外進出が加速される何回目かの波の真只中でありました。タイバーツは1ドル=25 バーツといわばドルペッグされておりタイの経済は海外からの資金が流入しまさにバブルの渦中に踊っていました。2 年後の97 年7 月初めに実質的なバーツ切り下げである変動制に移行し経済の大混乱が起るとは誰も予想せず、銀行の貸出も年20 ~ 30% は増加していく大変な成長期でした。

 赴任中の2 年間はこうしたバブル経済の中での忙しい営業活動に加え、JCC での会計理事や金融保険部会長はじめ日本人会・日本人学校・タイ日協会役員など幾つかの公職的な役割も仰せつかり、おかげさまで多くの日本の会社やタイの会社、政府関係の皆様とお付き合いさせていただきその後の自分のキャリアに大きな資産となりました。

 97 年7 月の初めに大混乱のタイを後に日本に戻りました。大混乱への対処は後任の吉松支店長( 現三井住友カード副会長)に託し、私は銀行の全社企画担当の総合企画部長となりました。当時の日本は橋本政権の頃で96 年頃の景気が比較的良好でもあったことから、一方で自由化・規制緩和・金融の世界では日本版ビッグバン、また一方で財政再建の目的から消費税を3% から5% に上げるといった状況でした。部長としての最初の仕事も「当行のビッグバンに対する戦略」といった極めて前向きの威勢のいいものでありました。

 ところがその年の秋頃から様相が一変、景気に急ブレーキがかかり山一証券・北海道拓殖銀行の破綻、翌98 年には日本長期信用銀行・日本債券信用銀行の破綻、そして当行を含む大手銀行に対する公的資金注入といった状況に陥りました。タイはタイでIMF の管理下に置かれましたが、日本の場合は80 年代後半のバブル経済の最終的なツケが大きく本格的なデフレに沈み込んでいったわけでした。
 私は企画部長としてこうした混迷の状況に日々対処すると共に、将来の日本の金融業のあるべき姿を求めて再編統合の途にも対処、結果さくら銀行と住友銀行が合併、今も私が勤務する三井住友銀行が誕生しました。合併は2001 年でしたので今年(2011年) は合併10 周年となります。多くのお客様に支えられてこの10 年という一つの節目を迎えることができ、本当に感謝に堪えません。

 日本経済のデフレ状況は今も続いており、最近ではEU・米国の状況にも大きな懸念が出来、まさに世界は不安定・不確実・不透明な環境の中にある、と言えましょう。帰任してから14 年経過しましたが、安定した一年は無かったように思います。
 帰国後のタイとの関係ですが、極めて密接に続いております。現在日タイ・ビジネスフォーラム(JTBF) の会長を務めさせていただいてます。このJTBF は任意団体、いわばボランティア的グループで、日タイ両国間の関係を一層強化促進するため、タイに駐在経験のある日本人ビジネスマンが個人の立場で参加し活動することを目的に、2002 年に丸子博之さん( 元泰国三井物産社長) の呼びかけで設立されたものです。当初の6 年間丸子さんが会長をされ、3 年前に私が引き継ぎ現在70 人の会員規模です。顧問として駐日タイ王国大使・BOI 長官・赤尾元駐タイ日本国大使・市村国際社会貢献センター理事長・丸子氏、また名誉顧問としてアーサ・サラシン氏( パデン・インダストリー会長、元外相)・歴代のBOI 長官・スウィット前駐日大使に就任いただき、いろいろとアドバイスを賜っています。副会長としては、水谷四郎氏( 元JETRO 所長)・有川武俊氏( 元泰国三菱商事社長)・森田仁美氏( 元フジクラタイランド社長)・渡辺和彦氏( 元王子ペーパータイランド社長)、そして事務局長が篠崎尚氏( 元兼松泰国社長)。

 JTBF の活動は東京のタイ王国大使館を主たるパートナーとして、両国間の関心事項に沿いテーマ毎に委員会を設けて協議する方式。例えば、日本の中小企業をもっと誘致する為にタイはどのような政策を導入すべきかのSME 委員会、日本の観光客やロングステイヤーを更に誘致する為の観光委員会/ ロングステイ委員会などなど全部で11 の委員会があり、大使館と連絡を相互にとりあい、タイからの関係要人が来日した際には、面談やレセプションに参加し、会社の立場を離れ個人の立場でざっくばらんに意見を言っています。

 タイでの勤務も数十年前から最近帰国した人まで、業種も役所関係からメーカー、商社、サービス、金融と幅広く、いわばJCC のOB の集いといった感じです。会員全員がタイのファンとも言え、いろいろな機会に集まった時には、タイの想い出や最近の情勢の情報交換、ゴルフの話と、タイの話の花が咲き乱れます。

また毎年1 ~ 2 月頃には、夫人同伴の会員も含め10 数人でのミッションをタイに派遣、JCC やBOI などの訪問に加え、懇親ゴルフそしてTAT( タイ観光庁) 推薦の小旅行も実施、タイの最新状況を実際に見聞するようにしています。JCC の会員の皆さんも日本に帰国されたら是非ご入会されることをお勧めいたします。(E-mail アドレスjtbf@abic.or.jp、URL:http://www.jtbf.info/ ) ( ホームページを見てみて下さい。タイのベテラン吉川氏( 元タイ・トーメン社長) の「写真で見るバンコックの今昔」、水谷氏( 元JAL バンコク支店長) 編の「私のおすすめするタイの旅」など興味深い項目が並びます。)

 こうしたJTBF の活動や前述した永い歴史の当行バンコック支店の存在から、私自身のタイとの関係は、帰国後もずっと続いており、数年前からはタイの最大のシンクタンクであるTHAI DEVELOPMENT RESEARCH INSTITUTE (TDRI) の評議員(TRUSTEE) も仰せつかっています。その役員会出席も含め、年に2 度は出張し、タイのお客様や政府関係の方々とお会いしております。
120 年を超える友好関係にあるタイは日本にとって今後一層重要な国になるものと確信しております。私はこれからも両国の更なる親密化にいささかでも役に立つことができるよう努力していきたいと思っております。

叙勲記念写真

2008 年12 月国王誕生日の際の叙勲時、歴代のバンコック支店長と
左から 吉田日本タイ協会理事長・古川・北山夫妻・吉村・小橋



(三井住友銀行会長)