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バックナンバー 2013-05

ナコーンパノム、ムクダハーンへの旅

~タイ東北部への旅 第2、第3のタイ・ラオス友好橋を訪ねて~

JTBF会員:水谷和正
2013/5/01

はじめに

今回の1泊2日の旅程はタイ政府観光庁東京オフィスのおすすめによるもので、
(第一日)
朝、バンコクから NOK AIR でナコーンパノムへ。昼食後、メコン川に架かる第3のタイ・ラオスの友好橋を渡りラオスのカンムアン県ターケークへ入国。ラオスの洞窟、寺院を観光し、夕刻、メコ川に映える夕陽をラオス側から堪能し、再度、友好橋を渡ってタイ側のホテル(ナコーンパノム・リバービュー・ホテル)に戻り、河岸のレストランで夕食。
(第2日)
朝食前、メコン川に映える朝陽を楽しむ。チェックアウト後、ナコーンパノム市街を観光し、メコン川の流れに沿ってムクダハーンに向かって南下。途中、イサーンで最も美しいパノム仏殿、東南アジア最大のキリスト教会ワットソーンコーン教会、を経由してムクダハーン市へ。ムクダハーン国立公園で天然の奇岩アートを観賞。昼食後、ムクダハーン・タワー(展望台)から市街、対岸のラオスの街、メコンの流れを展望。インドシナ・マーケットで買い物後、ナコーンパノムにに戻る。帰路、タイ美人の産地といわれるレーヌー・ナコーンへ。夕食後 NOK AIR でバンコクに帰着。


第1日の旅程

朝、バンコックを出発
今回の旅の仲間は7人、平均年齢70を超えた7人の侍。食べ、飲み、観る、撮る、その迸る好奇心、探究心、迫力はいまだ健在。タイでは近年、LCC(低コスト航空会社)が大成長。今回の旅もそのひとつ NOK AIR を利用。機材は ATR 双発エンジン、空港は以前の国際空港ドンムアン、なんとも懐かしい。機内は100席ほどが満席。若い乗務員のきびきびしたサービスも好感が持てる。バンコック、ナコーンパノム往復運賃4200バーツ、約11000円は日本の国内線の半分か3ぶんの1の値段。1時間40分の旅、まことに快適。

昼、ナコーンパノム空港到着
小さいがモダーンなビル。ここでバンコクからきたタイ人ガイドのヨン君に合流。日本語はほぼ完璧。イサーンについての知識も充分あるようで先ずは一安心、ガイドの質で旅のよしあしは決まるから。

メコン川にかかる第3のタイ・ラオス友好橋
2011年11月タイ側により建設される。昼食後、開通したばかりの橋(全長780m)を渡り、ラオスのカンムアン県ターケークへ。交通量はあまり多くないのに出入国手続きは時間をかけてやっていた。この橋の開通によりベトナム・ハノイへ最短でいけることになる。今回の旅で見る2つの友好橋を含め4つの橋の建設により、かって戦乱に明け暮れたインドシナも今後益々大きく変わっていくのだろう。

友好橋をわたってラオス観光 ナンエン洞窟
ナンエン洞窟。橋を渡り、土の道路を走ること小1時間、洞窟に着く。メコン川に沿ったラオス側には変わった形の石灰岩の山々が連なっており石灰岩が永年にわたり侵食されて出来た大小の洞窟がいたるところにあり観光スポットになっている。その中でも近年発見されたこのナンエン洞窟は規模が大変大きい。山ひとつくり貫けられているようだ。中に入ると、観光用の梯子の道が作られており、ところどころに仏像がある。古くから地元の人々の密かな祈りの場所になっていたのだろうか。

シーコートラブーン仏塔
本仏塔はナコーンシ-コートラブーンという名が使われていた時代(5-5世紀頃)にナンタセーン王によって建設された。仏塔内には仏舎利が収められている。現在改修中。

メコン川に映える夕陽(ラオス側より)
世界で一番美しいといわれるメコンの落日、決して言い過ぎではない。オレンジ色の太陽がメコン川に反射して綺麗に映える。時間が刻々と経つにつれ色の変化の美しさに言葉が見つからない。空を見上げれば、さまざまな形の雲に映える夕焼けの色彩。メコンの夕陽はまさにラオスに良く似合っている。ラオスの観光資源の宝だ。
河岸のレストランで7人の侍、ラオビールで沈み行く夕陽に、乾杯、チャイヨー。暗くなったので今晩泊まる対岸のタイのホテルに第3の友好橋を渡って戻る。以前タイに滞在してたころ、ビエンチャンに出張のたびに免税店でフランスワインを買ってきたのを思い出した。橋が出来れば免税店もあるだろう、ワインを購入したいと思ったが、まだそこまでは整備されておらず案内された店はどう見ても普通の酒屋。今日と明日の宴会用にフランスワインを多目に仕入れた。バンコックと比べて2割位は安いのではないかな


第2日の旅程

メコン川に映える朝日(タイ側より)
昨日のラオス側からの夕陽に酔い醒めぬ間に、本日の大スペクタクルショウはタイ側からである。
早朝、朝靄に霞む対岸のラオスの特徴ある形の山々を背にしてメコン川に映える朝陽、私の貧弱な文章力ではその感動は表現不可能である。まさしくタイは朝陽が良く似合う。この美しさ、誰でも詩人になる。我々、7人の侍、全員、日の出前の6時頃より、メコンの川岸に誘い出され、それぞれにまさしく始まる天体ショウに心のときめきを抑えきれない様子。本村さんはホテルの前のベンチに座り、固まった様子、まったく動かない。何か詩でも詠んでいるのかしら。カメラを持ったら人相が変わるといわれる奥村さん、大きな川原をあちこち大きく動き回っている、指宿さん、布施さんが彼等みなの姿を見て、「若いねー」と感嘆していた。
この素晴らしさ、これ以上記述は不要。日の前の静けさ、ついに朝陽が顔を出しメコン川に映えだしたときの感動、太陽がゆっくりとあがっていく小一時間の情景を、詩人本村さんが「二つの朝陽」にまとめてくれた。その漢詩にも似た名文は続報で紹介しよう。

ナコーンパノムの街
メコンの朝陽の感動覚めやらぬままホテルをチェックアウトして、しばし市街地をドライブ。18世紀ラマ2世が「山の都」と命名。タイ側には山は見えない。メコン川を挟んでラオスの山々が見渡せる.おそらく古代対岸のターケークからわたってきたラオ人が作った街ではないだろうか。古代から多くの民族がメコンを渡って開けた場所なのだろう。
街はメコン川に沿って細長く伸び、川岸には木が植えられ美しい遊歩道になっている。ちょうどこの時期、中国正月で川面を渡る涼風が赤いちょうちんを静かに揺らしまことに気持ちよい。

旧市庁舎
1915年に建てられ、コロニア風の3階建て。現在は図書館のようだ。正面にラマ5世の銅像がある。一息つくのに最高。

ワットソンコーン教会
1994年にサイアム建築家協会から受賞した東南アジア最大のカトリック教会。タイ、フランス領インドシナ紛争中に殉死した7人の信者を記念するため建設されたもの。信者(布施さん)が神父(水谷さん)になにやら懺悔しているが、何をかは内緒。

プラタート パノム
ナコーンパノムから50km、ラオ様式の仏塔が美しい。装飾には110kgの純金が使用されているよのこと、ラオ系の人々にとってイサーン最大の聖地である。仏塔は堂々としてしばし上を見ていると吸い込まれそうな感覚になる。下の仏塔の周りは大理石で大変立派。寺院には学生、僧侶の団体も多く大変な賑わいである。寺院の正面はメコン川。昔はメコン川から人が出入りしていたのだろう。寺院の前でリヤカーを引いて見慣れぬ野菜を売っていた。日本語でくず芋とか、食べてみるとなかなかおいしい果物風。


タイ・ラオス第2の友好橋
2006年に日本政府が建設供与。全長2700m。東西廻廊(ミャンマー・タイ・ラオス・ベトナム)の重要地点の橋の開通により廻廊の完成に向け大きく前進するだろう。今後、橋の上の人、物の動きは益々活発になるだろう。しかし目を下に向けるとメコンの川の流れはなんと静かに悠々としていることか、長い歴史をじっと見つめながら。この橋の上と下の川の流れのコントラスト、いつも不思議に思い考えさせられるのだ。もうひとつ今回の旅で思うのはメコン川を挟んでタイとラオス、民族は兄弟同士、しかしなんと近現代史は違ったことか。

ムクダハーン・タワー
ブミポン国王の即位60周年を祝い1996年建設(65.5m)。最上階に仏像があり、その下の階から対岸のラオスも含め360度ぐるりと見渡せる。1階と2階は民族歴史館。8つの民族につき解説がある。多くの少数民族がラオス側から渡ってきて作られた歴史の街でもある。
このあたり、メコン川の中央は白い砂州。まるでながす鯨が背泳ぎして腹を見せたように見える。指宿さんが言っていた。若かりし頃見た滔々たるメコンの大河の流れとの違和感はぬぐい得ない。上流の中国のダム建設の影響かな。

ムクダハーン自然公園
プ-・パー・トゥープ奇岩の丘。太古に降り積もって固まった火山灰が風雨によってけずりとられたもの。公園には滝、花畑をめぐるトレッキングコースもあるが現在は乾季で滝も花畑も見られない。低い岩山、奇岩の連なりを見る。

インドシナ・マーケットで買い物
メコン川に沿って道路の両側に立ち並ぶマーケット。タイ、ベトナム、中国の製品が雑然とたくさん並んでいるが、大部分は中国製の品物であるようだ、我々にとって特に買い心を惹かれるものは見当たらない。タイ、ラオスの地元の人のマーケットになっているらしい。人通りは大変多い。

タイの美人の産地レーヌー、ナコーン
ムクダハーンより一路ナコーンパノムに戻る帰路、レーヌー・ナコーンに立ち寄る。北上する道路の左側の西に夕陽を見つつ、右側の東にメコン川、ラオスの山々を見る。この街は3年連続ミス・タイを排出した有名な美人の産地とのこと、わくわくする。

街の中央広場にはワット・タート・レーヌー仏舎利塔、そこに沈む夕陽、薄暗い広場に人影はない。薄暗くなった広場の端から2台のバイクが。女性であることは間違いない。タイ語に精通した指宿さんなにやら話してる。相手も何かうれしそう。ニコニコしてる。婦人立ち去った後、指宿さんに何を話したのと聞いたら、彼がここに来たのは美人が多い街と聞いたからといったところ、その通りとのことで、タイ正月のソンクランに来れば若い美しい娘がたくさん見られるとのこと。そこで指宿さん、すかさず「ジンケー、ジンマン」と返したとのこと。「人は年を取ればとるほど、魅力が増すものですね」、2人がニコニコするはずです。


昼2回、夜2回のイサーン料理すべてに大満足。全員一致100点満点。
タイ滞在平均10年以上の猛者連中が100点満点です。嘘ではありません
うまい! 料理は新鮮、プラ-プッ、プラー・ヌア・オーン、地場野菜等々、何を注文してもうまい。酒はラオビール、タイビール、それにラオスで調達した本物フランスワイン。
安い! ビールを飲んで、食事を多すぎるくらい注文して1人、せいぜい300バーツ(8-900円)
サービス! とにかくイサーンの娘は素朴で、心優しい


終わりに

日本人のタイ旅行は、昨年タイへの日本人旅行者は120万人を越え、タイはビジネス、観光、いずれの面からもアジアでもっとも近い国になっている。ただ日本人のタイへの旅行者の主な行き先はとなると、大部分がバンコクおよびその周辺であり、加えて一部チエンマイ、ビーチリゾートのプーケットと極めて限られたところであろう。
JTBFが行っている毎年のタイの地方への旅でも日本人の旅行者に会うことはめったにありません。会うのは欧州人。4万人以上滞在しているバンコクの日本人ですら仕事以外でタイの田舎に旅する人は極めて少ないのではないでしょうか。
昼はゴルフ、マッサージ、夜は酒場で日ごろのストレスを発散するのも良いでしょう。しか旅には本来それだけではない何かがあるような気がします。そもそも旅というのは、というのもおこがましいが、日常定住して暮らしている人が異次元の世界へただならぬ出会いを求めて出かけることではないだろうか。
毎年のJTBFのタイの田舎への小さな旅でも思うことですが、行くたびに何か新たな発見があるような気がします。元気を与えられるような気がするのです。色々な土地、さまざまな人々、山水草木すべてが衰えたパワーに生気を与えてくれるような気がするのです。

最後の最後になったが、今回の旅の成功にはタイのガイド(ヨン君)とラオス側のガイド(トゥック君)によるところが大きい。我々のようにタイを良く知っている、ある意味では難しい旅人に対し、リズムを崩すことなくタイミングよく的確な案内を提供してくれた二人に感謝申し上げたい。観光立国にとってガイド養成が極めて重要な政策であると痛感します。