サイトイメージ
文字サイズ:   

日タイビジネスフォーラム (JTBF)

English

 

タイ国に駐在経験のある日本人ビジネスマン(現役&OB)が個人の立場で参加しています。これまでの日本・タイ国両国におけるビジネス経験を生かし、両国間友好関係の促進に寄与したいと考えています。


sketched by H. Murata
Sanam Chan palace, Nakhon Pathom province


リレーエッセイ 第23回配信

2024年07月01日配信
JTBF 広報委員会

タイミッション報告(その5)

日系企業とタイの関係
 

 2009年から2012年までタイ(在タイ日本国大使館)に駐在していた関係で、主にタイ経済やタイへの経済協力に関する研究を行っています。コロナ禍もあり、しばらくは訪タイもかなわない状態が続きましたが、2023年にはタイへの短期学生引率研修を実施するなど、タイとの交流を本格的に再開させているところです。こうした中で、2024年2月に行われましたJTBFの訪タイミッションに一部ながら初めて参加することができました。久しぶりにお会いした懐かしい方も多く、タイでのご活躍をお伺いする貴重な機会をいただけました。御多忙の中、面談にご快諾いただきました皆様に感謝申し上げます。

 実際にお会いしてお話を伺う中で、駐在当時と異なるのは日系企業からみたタイへの期待感です。十数年前の駐在時にはASEANの生産拠点としての期待や国内市場への期待を背景に設備投資拡大といったものもありましたが、ここにきてこれ以上の投資拡大を行わないという声が多くなったように感じます。この背景として、タイ国内要因としては観光業が2割近くを占めコロナ禍で国内市場が大きく縮小したことや労働者が払底している中でタイの賃金上昇率が大きいこと、少子高齢化により国内市場自体の縮小が見込まれることがあげられるようです。また、タイ周辺国との関係では、道路でつながった陸ASEANも案外輸送費用の縮減が難しいこと、などがあげられるようです。事実、国際協力銀行(JBIC)が毎年実施している「わが国製造業企業の海外事業展開の動向」では、例年2~4位を占めるなど進出先として人気のあったタイが近年6位まで低下するなど期待値の低下が指標にも表れています。

 今回のJTBFタイミッションの参加とその他のヒアリングをもとに、JBICの調査を使用し足元のタイへの期待値低下に関する要因を簡単に分析したところ(Sakurai 2024)、短期的にはGDPとは相関がみられ、長期的にはコロナ禍をきっかけに海外進出先としての期待値が低下している関係性を見出すことができました。

 ここから想定できる対応策として、日系企業とタイの関係性をもう少し密にしていくことが重要かと思われます。主たる実施主体はタイ側と考えられ、宣伝・広報活動や日本側からの要請への対応といった積極的なコミュニケーションが重要に感じますが、日系企業幹部の方にも機会をみてぜひタイにお越しいただき、コロナ禍でも変わりゆくタイの現状をご覧いただく機会がありますと幸いに感じます。

(写真左)バンコク中央駅(バンスー)に停車するレッドライン。日本が供与した鉄道システムにより開通(2022年撮影)。
(写真右)バンコク中心部。左側の建物はデパート。まだバイクも多く、左下には非冷房のバスもみられた(2022年7月撮影)。

文責 櫻井宏明

(参考)
国際協力銀行(JBIC)「わが国製造業企業の海外事業展開の動向」
https://www.jbic.go.jp/ja/information/research.html
Sakurai, H. (2024) “Is Thailand attractive to Japanese companies?”
https://www.mdpi.com/2227-7099/12/5/122