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タイ国経済概況(2025年12月)

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1.景気動向

(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が11月17日に発表によると、2025年第3四半期の経済成長率は前年同期比+1.2%となり、2021年第3四半期の▲0.1%以来の低水準となった。農業は同+1.9%、非農業は同+1.2%で、第2四半期のそれぞれ+6.4%、+2.5%から減速しており、製造業は同▲1.6%とマイナスに転じた。一方、卸・小売業および修理業は同+6.5%と、第2四半期の+6.3%から引き続き堅調だった。2025年1~9月期の経済成長率は同+2.4%となった。また、2025年通年の成長率見通しは+2.0%、2026年通年の成長率見通しは+1.2~2.2%とされた。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が11月25日に発表した2025年10月の自動車生産台数は、前年同月比+14.2%の13.6万台で、2ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は国内向けが同+70.7%の5.3万台、輸出向けが同▲5.9%の8.3万台。また、2025年10月の国内新車販売台数は同+24.8%の4.7万台で、輸出台数は同▲1.5%の8.3万台だった。
 
(3) FTIが11月25日に発表した2025年10月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲29.0%の20.9万台で、9ヵ月ぶりにマイナスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+1.0%の15.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲59.6%の5.9万台。また、同月の国内販売台数は同▲4.6%の13.4万台、輸出台数は同▲48.8%の9.0万台だった。
 
(4) タイ中央銀行(BOT)が11月28日に公表した10月の経済・金融報告によると、タイ経済は前月比で加速したことが示された。電子製品輸出の増加により物品輸出が伸び、サービス業も外国人観光客数の増加や経済刺激策による民間消費の増加を背景に前月から拡大した。製油所のメンテナンスによる一部生産停止があった一方、電子製品製造業は増加した。結果、製造業全体では横ばいとなった。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)は11月28日、三井住友銀行と「日タイ投資フォーラム2025」を東京で共催し、タイの投資機会や政策を紹介した。日本の大手企業経営者ら450名超が参加し、日本企業にとってタイが依然重要な拠点である現状が示された。エクニティ副首相兼財務相は、両国の長年の強固な関係やタイに進出する6,000社以上の日本企業の存在に触れ、「Quick Big Win」政策の柱である「未来への投資」を説明。BOIには重要案件を迅速化する「Thailand Fast Pass」、10万人超の高度人材育成、技術活用によるサプライチェーン高度化を進めるよう指示していると述べた。また、自動車産業支援として、EV委員会によるHEV・マイルドハイブリッド支援策承認や古い車との交換制度等にも言及した。ナリットBOI長官はタイ投資の魅力や主要促進策を説明し、将来戦略産業としてBCG、EV、半導体・先端エレクトロニクス、デジタル・AI、IBCを提示。日本側からは三井住友銀行が成長分野としてヘルスケア、インフラ、データセンターを挙げ、JETROはタイがASEANでのサプライチェーン・投資展開のハブであると説明した。日本製鉄やデンソーは自社の事業展開を紹介。BOIはフォーラムに加え、日本の自動車メーカー6社と投資計画を協議し、市場刺激策や保護策、輸出競争力強化策等の追加検討要望が出されたほか、他の主要投資家とも個別協議を行った。
 
(2)新政権下で初めて開かれたタイ国家電気自動車政策委員会(EV委員会)では、急拡大するEVセクターの課題と対応策が協議された。議長のエクニティ副首相兼財務相は、既存インセンティブの実効性を高めるための戦略的見直しを承認し、市場の需給バランスを整える新措置も導入した。これにより、タイをEV主要生産拠点としてさらに強化することを目指す。主な決定事項として、まずEV促進効率の向上に関し、①国産EV(EV3・EV3.5)の登録期限延長、②補助金支払い規制の明確化、③国内生産延長ルールの柔軟化、④バッテリーセル輸入ルール期限延長による国内化促進、⑤HEV支援が承認された。次に需給調整策として、①輸出促進インセンティブ、②リバース・イグジット制度の導入が決まった。足元では全体の自動車需要が鈍化する一方、PHEV・HEV・BEV等電動車は依然として成長している。これは、政府の内燃車から電動車への移行方針とも整合している。2025年9月時点でEV3/EV3.5スキームの登録台数は23.8万台を超え、EVサプライチェーン関連の累計承認投資額も2025年10月末で1,400億バーツに達した。充電インフラも拡大を続け、2025年9月のDC急速充電器は7,096基に達し、2030年の12,000基目標に向けて順調に増加している。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、10月末時点での金融機関預金残高は26兆2,300億バーツ(前年同月比+2.6%)、貸金残高は30兆5,540億バーツ (同+0.8%)。また、政策金利は10月8日に1.50%に据え置かれた。

4. 政治動向、その他

(1)11月7日に労働者保護法の改正法が官報に掲載された。改正内容は、産休期間を最長98日から120日に、賃金給付期間を最長45日から60日にそれぞれ延長するものとなっている。また、新生児の看病や先天性異常への対応については、診断書の提出を条件に最長15日間の休暇(期間中は賃金の50%給付)が認められ、さらに配偶者についても産前または産後90日以内に取得できる最長15日の育児休暇(期間中は賃金全額給付)が新たに定められた。改正法は官報掲載から30日後の12月7日に施行された。また、12月2日の閣議では、労使折半でみなし月給の5%ずつを支払う社会保険料について、その算定基準となる月給上限を引き上げる法案が承認された。上限額は、2026~2028年が17,500バーツ、2029~2031年が20,000バーツ、2032年以降が23,000バーツとされている。これに伴い、みなし月給で計算される老齢年金、失業手当、産休手当等の給付額も引き上げられる。
 
(2)12月2日、タイ商工会議所は、11月下旬からの豪雨によりソンクラー県ハジャイ市を中心に発生した南部洪水の被害額が、国内総生産(GDP)の0.22%に相当する400億バーツに達するとの見通しを発表した。観光のハイシーズンであり、かつ東南アジア競技大会(SEA Games)の会場となる予定だったことから、観光・サービス業の被害が最も大きく、全体の56.1%にあたる約22.4億バーツを占めた。12月4日早朝時点の災害防止軽減局の発表によると、死亡者は188人、被災者は147万6,239世帯とされている。政府は12月2日の閣議で、政府系特定目的金融機関(SFI)による債務返済の12ヵ月間の一時停止(停止期間中の利息計算免除)や、低利の災害復旧ローン等を承認した。なお、8月からアユタヤ県を中心に続いている洪水も依然として収束していない。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2025年12月10日)