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タイ国経済概況(2026年8月)

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1.景気動向

(1)タイ商務省は7月24日、2026年上半期の輸出額が前年同期比+17.6%の1,967.4億米ドル、輸入額が同+38.0%の2,284.9億米ドルとなり、貿易収支は▲317.4億米ドルの赤字だったと発表した。品目別輸出額では、農産物・加工品が同▲3.2%の265.6億米ドルとなった。主力品目の米は同▲20.5%の19.1億米ドル、天然ゴムは同▲15.2%の23.0億米ドルと大幅に減少した。一方、主要工業製品は同+21.6%の1,645.7億米ドルとなり、電子製品・部品は同+53.6%の516.9億米ドルだった。自動車・部品は同+2.9%の202.6億米ドルだった。国・地域別輸出額では、米国向けが同+41.1%の471.5億米ドルで首位となった。ASEAN9ヵ国向けは同+12.2%の411.7億米ドルだった一方、CLMV向けはカンボジア向けの大幅な落ち込みが響き、同▲9.3%の148.9億米ドルとなった。商務省は、2026年下半期も電子製品への需要拡大に支えられ、輸出の堅調な伸びが続くと予測した。一方、地政学的緊張の激化や、米国の貿易措置・輸入関税を巡る不透明感が下押し要因になるとの見方を示した。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が7月24日に発表した2026年6月の自動車生産台数は、前年同月比▲7.6%の12.0万台で、3ヵ月連続でマイナスを記録した。内訳は国内向けが同+16.1%の5.3万台、輸出向けが同▲20.2%の6.8万台。また、2026年6月の国内新車販売台数は同+17.3%の5.9万台で、輸出台数は同▲7.5%の8.2万台だった。
 
(3) FTIが7月24日に発表した2026年6月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+3.7%の21.3万台で、2ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+4.1%の18.3万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+1.5%の3.0万台。また、2026年6月の国内販売台数は同+15.4%の17.8万台、輸出台数は同▲6.2%の6.2万台だった。
 
(4) 7月24日、トランプ米政権は60ヵ国・地域を対象に、通商法301条に基づく輸入品への追加関税措置を発表した。ASEANではタイを含む7ヵ国が対象となり、最恵国待遇(MFN)税率に10~12.5%の追加関税を上乗せした。税率は、カンボジア、インドネシア、マレーシアが10%、フィリピン、シンガポール、ベトナム、タイが12.5%となった。タイに比較的高い税率が適用された背景には、強制労働で生産された製品の輸入を禁止する法制度が未整備であることや、製造業の構造的な過剰生産能力に対する懸念がある。米国側は、タイに強制労働が存在すると認定したのではなく、強制労働によって生産された製品の輸入を禁止する法律の整備を求めている。また、タイ側は、国内産業の設備稼働率は70~90%で、60%を下回る産業はないと説明している。一方、本措置に関連して、タイ製品の対米輸出における免税対象品目は471品目から2,120品目へ拡大し、輸出品目数全体の61.5%を占めることとなった。これらの品目の輸出額は562億米ドルで、タイの対米輸出額の50%を占める。スパジー副首相兼商務相は、現在、相互関税協定(ART)について米通商代表部(USTR)との実務者協議の日程を調整していると説明した。交渉では、税率を最低水準まで引き下げることよりも、競合国と大きく異ならない税率を確保し、タイ企業の競争力を維持することを目指すとしている。さらに、タイ政府は、強制労働に関する法案を2027年に国会へ提出する方針を示したほか、国内製造業に構造的な過剰生産能力の問題がないことを米国側に説明する。また、米、キャッサバ、ペットフード、医療用ゴム手袋、水産加工品等、7分野・78品目の農産物・加工品を免税対象に追加するよう米国側と交渉する方針を示した。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)は7月8日、投資申請9件、総投資額663億バーツを承認した。対象分野は、人工知能(AI)、先端電子、航空、クリーンエネルギー、食品等で、デジタル・先端電子分野が中心となった。主な案件には、日本のデータセクションのタイ現地法人による、バンコクおよびパトゥムタニ県での高性能GPUサーバーインフラ整備、韓国・斗山グループのタイ現地法人による、プリント基板(PCB)材料の銅張積層板(CCL)およびプリプレグの製造、台湾のTUCのタイ現地法人による、AIサーバーやデータセンター向けCCLおよびプリプレグの製造等が含まれる。また、BOIはデータセンター投資の増加に対応するため、既存の専門委員会を再編・拡充し、「データセンター投資のためのエネルギー管理・事業審査小委員会」を設置した。同小委員会は、投資家が税制優遇を申請する前に、各プロジェクトの資源消費量、環境への影響、クリーンエネルギーの調達計画などを一元的に審査する。さらに、大規模データセンター投資に対応するため、政府は7項目のエネルギー行動計画を迅速に進める方針を示した。具体的には、データセンター向け専用電気料金の設定、電力開発計画(PDP)に沿ったグリーンエネルギー目標の設定、直接電力購入契約(Direct PPA)によるクリーン電力取引の促進、電力使用保証制度の導入、大手事業者向けの高圧電力の直接供給の検討、電力網への投資加速、電力・水資源の供給可能性を踏まえた立地マッピング等を進める。
 
(2)BOIは7月23日、2026年上半期の投資申請額が前年同期比+37.0%の1.47兆バーツ(約436億米ドル)に達し、申請件数は1,299件だったと発表した。投資拡大は、デジタルインフラや人工知能(AI)関連データセンターへの大規模な投資がけん引した。分野別では、デジタル分野が1.12兆バーツで最大となり、電気・電子分野が1,202億バーツでこれに続いた。また、海外直接投資(FDI)は877件、総投資額1.37兆バーツとなり、前年同期比+80.0%と大幅に拡大した。投資額を国・地域別に見ると、シンガポールが1.12兆バーツで首位となり、以下、英国(472億バーツ)、中国(458億バーツ)、台湾(380億バーツ)、日本(328億バーツ)の順だった。投資案件は、データセンター、データホスティング、クラウドサービス等のデジタル分野に集中した。これに続き、光トランシーバー、プリント基板、ハードディスクドライブ(HDD)等の電気・電子製品、データセンター向けネットワーク機器・冷却システムのほか、ヒューマノイドロボット部品、自動車部品、食品・飲料、先端素材など、将来性の高い産業分野への投資もみられた。BOIは、2026年上半期に投資奨励を承認したプロジェクトにより、タイ人向けに8万2,000人超の雇用が創出されると見込んでいる。また、年間で約3,860億バーツ相当の国内原材料を使用し、輸出能力を年1.24兆バーツ超押し上げると予測した。ナリットBOI長官は、「重要なのは投資額そのものではない。真の成功とは、タイの労働者に質の高い雇用をもたらし、技能向上と所得増加につなげることである」と述べた。さらに、タイ企業にサプライチェーン参入の機会を提供し、成長の恩恵を一部地域に限らず全国へ広げることが重要だと強調した。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2026年6月末時点での金融機関預金残高は27兆1,200億バーツ(前年同月比+4.7%)、貸金残高は31兆2,000億バーツ(同+2.6%)。また、政策金利は6月24日に1.00%に据え置かれた。

4. 政治動向、その他

(1)タイ国鉄(SRT)は2026年5月19日に、都市鉄道SRTレッド・ラインRangsit – Thammasat RangsitおよびSiriraj – Taling Chan – Sala Yaの各延伸区間の建設について、落札者と契約を締結した。両延伸区間とも7月23日に着工した。2029年開通予定で、運営会社は現在運営中の区間と同様にSRT傘下のS.R.T Electrified Trainが担う予定。SRTは、レッド・ライン延伸区間開通後、バンコク~パトゥムターニー間の渋滞緩和やバンコク西部およびナコーンパトムへのアクセス改善につながるとの見方を示している。
 
(2)タイ空港公社(AOT)の発表によると、2026年7月のタイ主要6空港(スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイ、チェンライ、ハジャイ)の利用者数は、中東情勢の影響を受け、前年同月比▲2.0%の958.8万人で、4ヵ月連続のマイナスとなった。国際線は同▲1.7%、国内線は同▲2.5%だった。空港別では、スワンナプームが同+0.6%の511.6万人、ドンムアンが同▲9.0%の210.7万人、プーケットが同▲1.5%の121.9万人、チェンマイが同+2.7%の75.6万人、チェンライが同▲3.3%の14.2万人、ハジャイが同▲5.8%の24.8万人だった。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2026年8月11日)