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タイ国経済概況(2025年6月)

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1.景気動向

(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の5月19日の発表によると、2025年第1四半期の経済成長率は前年同期比+3.1%だった。業種別に見ると、農業は同+5.7%と前期の同+1.1%から大きく加速し、製造業も同+0.6%と前期の同+0.3%からやや加速した。一方、サービス業は観光需要が伸び悩み同+4.2%と前期の同+4.7%から減速した。また、同委員会の2025年通年の成長率見通しは、米国の相互関税や家計債務の高止まりの影響で、同+1.3~2.3%と前回予想から下方修正された。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が5月22日に発表した2025年4月の自動車生産台数は、前年同月比▲0.4%の10.4万台で、21ヵ月連続のマイナスとなった。内訳は国内向けが同+13.5%の3.7万台、輸出向けが同▲6.7%の6.7万台。また、2025年4月の国内新車販売台数は同+1.0%の4.7万台で、輸出台数は同▲6.3%の6.6万台だった。
 
(3) FTIが5月22日に発表した2025年4月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+17.1%の19.0万台で、3ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+15.2%の15.7万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+27.2%の3.2万台。また、2025年4月の国内販売台数は同+3.9%の13.2万台、輸出台数は同+5.9%の2.8万台だった。
 
(4) タイ工業連盟(FTI)が5月19日に発表した2025年4月の産業景況感指数(TISI)は、前月比▲1.9ポイントの89.9で2ヵ月連続下落し、過去6ヵ月間の最低値となった。FTIは4月は例年通りソンクラーン連休で稼働日数が少ないほか、米国の品目別関税や依然として安価製品の流入が続いていること、3月28日に発生した地震で高層不動産購入を延期する傾向が業界に悪影響を与えていると指摘した。業種別では47業種中22業種が上昇。企業規模別では、中小企業が前月比+3.2ポイントの75.7、中堅企業が同▲5.0ポイントの84.9、大企業が同▲3.3ポイントの108.5だった。また、今後の国際貿易状況の不透明性で、3ヵ月後のTISIの見通しが同▲2.4ポイントの93.3で、2021年10月以降の最低値となった。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)は5月19日、データセンターへの投資促進に関する新たな条件を承認した。条件はプロジェクトにおいて、電力使用効率(PUE)基準を満たし、画像処理装置(GPU)等の先端コンピューティング機能を活用したデータホスティングを提供しなければ、8年間の法人税免除が受けられないという内容。これらの条件を満たさない場合、法人税免除期間は5年に制限される。なお、この分野の投資奨励申請者は、プロジェクトがタイ経済にどのように貢献するかを詳述した計画書を提出する必要がある。計画書には、専門職研修、地元の専門学校や大学との協力によるコース開設や共同研究開発プロジェクトの実施、タイ中小企業向けのスキル開発プログラム、タイのサプライチェーン強化支援等の活動を含めることが必須。この計画が完了しない限り、法人税免除の権利を行使することができない。今年第1四半期時点で、BOIはすでに27件のデータセンタープロジェクトに投資奨励措置を付与しており、総投資額は2,406億バーツに上る。
 
(2)BOIは5月19日、観光客が少ない県における観光事業に対する税制優遇措置の改善を承認した。この措置は、観光客の少ない地域へ観光客の分散を促し、観光による経済的利益を全国に広めることを目指している。指定された55県における大規模で質の高い観光施設、テーマパーク、タイ文化センター、タイ手工芸センター、博物館、野外動物園、国際展示場、大規模コンベンションホール、クルーズターミナル、モーターレース場、ケーブルカー、観光用電気トラム等の観光事業への投資は、従来の5年間から8年間へ法人税免除期間が延長される。また、これらの県におけるホテル事業への投資は、従来の3年間から5年間へ法人税免除が延長される。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2025年の4月末時点で金融機関預金残高は25兆9,490億バーツ(前年同月比+2.9%)、貸金残高は30兆6,780億バーツ(同▲0.7%)。また、政策金利は4月30日に2.00%から1.75%に引き下げられた。

4. 政治動向、その他

(1) ぺートンターン首相が委員長を務める景気刺激政策委員会は5月19日、当初デジタル・ウォレットでの給付金として使用予定であった予算1,570億バーツ(給付金第3弾以降の残り)の使途見直しを承認し、5月20日に同政策を閣議承認した。貿易戦争の影響に備えるため、当初事業の代わりに中小企業および輸出者支援、交通インフラ開発、観光、地方経済支援、水管理、その他雇用促進プロジェクトに利用予定。財務省は、この政策により通年の国内総生産(GDP)成長率が0.7~1.0%引き上がると予測している。
 
(2) タイ政府は5月20日の閣議で、13業種の技能労働者の基準賃金を新しく制定することを承認した。対象業種は観光バスやトラック運転手、各種クレーンオペレーター、電気自動車整備士、プログラマー(C言語)、ムエタイトレーナー等で、今回定める基準賃金の日額は485~800バーツ。官報掲載の90日後に施行される予定で、施行後、基準賃金が制定されている業種の数は141となる。なお、基準賃金は業種のほか、3つの技術レベルによって金額が異なり、適用を受けるのに労働省の技能開発局が定めた検定試験に合格しなければならない。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2025年5月10日)