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タイ国経済概況(2026年9月)

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1.景気動向

(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の8月17日の発表によると、2026年第2四半期の実質GDP成長率は前年同期比+1.9%となり、前期の+2.8%から減速した。支出面では、民間消費支出が同+1.9%と、前期の+3.3%から減速した。アパレル等の半耐久財のみ伸びが加速した一方、その他の項目はプラスを維持したものの、伸びが鈍化した。消費者信頼感指数も前期の52.8から50.3に低下し、2022年第4四半期以来の低水準となった。政府消費支出も同+0.2%と、前期の+3.4%から大幅に減速した。投資は全体で同+9.1%とやや減速したものの、民間投資は同+13.4%と伸びが加速し、2012年第4四半期以来の高い伸びとなった。一方、公共投資は同▲1.6%と、3四半期ぶりのマイナスとなった。貿易面では、物品輸出が同+17.6%と前期並みの高い伸びを維持した。輸入は同+42.3%と伸びがさらに拡大し、20四半期ぶりの高い伸びとなった。生産面では、農業が猛暑や長期化する干ばつの影響により、同+1.5%に減速した。製造業も主要品目の生産減少により同+0.1%にとどまり、設備稼働率は57.47%と、2020年の新型コロナウイルス感染拡大期以来の低水準となった。宿泊・飲食サービス業も、国内旅行および外国人観光客数の減少により同+1.5%へ減速した。輸送業、建設業もプラスを維持したものの、伸びは鈍化した。2026年通年のGDP成長率見通しは+2.0~2.5%と、前回予測からレンジが絞り込まれた。燃料価格高騰の緩和を背景に、政府消費支出を除く全項目が上方修正された一方、貿易収支は赤字となる見通しである。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が8月25日に発表した2026年7月の自動車生産台数は、前年同月比+6.1%の11.7万台で、4ヵ月ぶりにプラスを記録した。内訳は国内向けが同+22.4%の4.5万台、輸出向けが同▲1.9%の7.3万台。また、2026年7月の国内新車販売台数は同+20.1%の5.9万台で、輸出台数は同+2.4%の7.4万台だった。
 
(3) FTIが8月25日に発表した2026年7月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+0.5%の20.3万台で、3ヵ月連続でプラスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同+2.9%の17.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲10.6%の3.3万台。また、2026年7月の国内販売台数は同+5.1%の15.2万台、輸出台数は同▲4.2%の6.8万台だった。
 
(4) タイ中央銀行(BOT)が8月31日に公表した7月の経済・金融報告によると、海外からの電気製品需要の拡大、中東情勢の緩和、政府の景気刺激策を背景に、タイ経済は前月から回復した。内需面では、政府の「タイ・チュアイ・タイ」措置が民間消費を押し上げたほか、連休に伴う国内旅行の増加も消費を下支えした。こうした動きを受け、消費者信頼感指数も改善した。外需面では、航空便数の回復や欧州等における学校の休暇を背景に、外国人旅行者数が前月から増加した。また、輸出では、AIや先端技術関連の需要拡大を受け、米国や香港向けを中心に電子製品の輸出が好調に伸びた。供給面では、輸出の拡大が製造業をけん引した。輸出比率が6割以上の品目では、電気製品を中心に生産が堅調に増加したほか、輸出比率が3~6割の品目でも、国内向け輸送機器の生産増加により改善がみられた。サービス業も観光活動の回復に伴い上向いた。特に、外国人旅行者や国内旅行者の増加を受け、ホテル・飲食業や旅客運送業が堅調に推移した。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)は8月13日、ナリット長官がジェトロ・バンコク事務所の阿部一郎所長および盤谷日本人商工会議所の近藤裕康会頭と協議を行ったと発表した。協議では、2021年から2026年上期までの日系企業による投資申請が1,380件、総投資額が3,960億バーツに達したことが報告されたほか、2026年上期の日系企業景気動向調査の結果が共有された。同調査によると、2026年上期の業況感DI(Diffusion Index)は、中東情勢に伴う原材料価格や輸送コストの上昇を背景に、前期の0から▲6に低下した。一方、半導体需要や工場・設備への投資は堅調に推移しており、下期の業況感DIは横ばいとなる見通しである。投資については、23%の企業が投資の拡大を見込んでおり、特に新規設備投資、既存設備の改善、デジタル化を計画している。こうした動きはBOIの産業高度化措置とも整合しており、同措置への申請は400件以上、総投資額は550億バーツを上回った。一方、日系企業がタイ政府に期待する支援として、税制・補助金・金融面での支援のほか、国内での販路拡大支援が挙げられた。また、今後の日系企業によるタイでの事業拡大に向け、高付加価値産業への転換、クリーンエネルギーの利用促進、脱炭素化、人材育成、投資を促進するビジネス環境の整備についても協議が行われた。
 
(2)BOIは8月14日、2026年第2四半期の実投資額が2,550億バーツに達し、前年同期比+31%となったと発表した。上半期の実投資額は総額5,350億バーツに達した。主な投資は重点産業を中心に、人工知能(AI)やクリーンエネルギー関連分野に集中した。これにより、タイ人向けに63万人の雇用創出が見込まれており、その約6割は電気製品、輸送機器、デジタル、自動化システム・ロボット等の高度産業に集中している。分野別の投資額を見ると、光通信機器やプリント基板(PCB)等を含むAI関連投資が1,270億バーツと最大で、全体のほぼ半分を占め、前年同期比で約2倍に拡大した。これに続き、再生可能エネルギー発電を含むクリーンエネルギー・インフラ投資が同+18%の230億バーツ、農業・食品加工業が同+18%の223億バーツとなった。ナリット長官は今後、新規投資申請の誘致だけでなく、承認済みプロジェクトの円滑な実施にも注力すると説明した。主要プロジェクトについては、「タイランド・ファスト・パス」措置を通じて実投資を加速させる方針を示した。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2026年7月末時点での金融機関預金残高は27兆2,516億バーツ(前年同月比+4.6%)、貸金残高は31兆2,249億バーツ (同+2.7%)。また、政策金利は8月26日に1.00%に据え置かれた。

4. 政治動向、その他

(1)8月11日の閣議で、公務員の行政改革案が承認された。主な施策としては、増員を伴わない組織再編の検討、2026年10月から、退職者が生じた際に、正規雇用を必要としない職種(事務・広報・図書関連等)における公務員採用を廃止し、有期雇用など他の雇用形態へ切り替えること、デジタル技術の活用による業務効率化、早期退職優遇制度の導入等が挙げられる。これらの取組みにより、2032年度までに公務員ポストを2026年度比で15%以上削減することを目指している。なお、2027年度予算3兆7,880億バーツのうち、約33%に当たる1兆2,420億バーツが、公務員の給与および老齢年金に充てられるとされている。
 
(2)5月19日の閣議で、2024年7月から適用されている「93ヵ国・地域を対象とする60日間のビザ免除」措置を廃止することが決定され、8月31日に官報で公示された。その背景には、観光ビザを悪用した詐欺や不法就労等の犯罪を防止する狙いがある。発効日の9月15日以降は、従来型のビザなし短期滞在制度が適用され、日本を含む60ヵ国・地域のパスポート所持者については滞在可能期間が30日、2ヵ国・地域については15日に短縮される。また、3ヵ国・地域については、15日間の滞在が可能な到着ビザ(VoA)制度に切り替わる。さらに、タイとの間で二国間ビザ免除協定を締結している16ヵ国・地域のパスポート所持者は、14~90日間、ビザなしで滞在することができる。なお、長期滞在を目的として出入国を繰り返す「ビザラン」を防止するため、短期滞在制度の対象国・地域からの陸路入国については、暦年で2回までに制限される。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2026年9月10日)