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タイ国経済概況(2025年4月)

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1.景気動向

(1)米国のトランプ大統領は4月2日(現地時間)、すべての国・地域に対して一律10%の関税を課し、さらに貿易相手国に上乗せする「相互関税」の税率を発表した。ただし、4月10日時点では、中国以外の国・地域に対する相互関税を90日間停止し、10%の一律関税を適用すると発表した。タイの相互関税率は36%で、日本の24%よりも高いが、ASEAN内で比較すると、カンボジアの49%、ラオスの48%、ベトナムの46%、ミャンマーの44%よりも低い。タイ政府は、この税率がタイ経済へ与える影響は約8,800億バーツで、輸出目標を見直す必要があるとの見解を示している。対応策として、タイ国内で供給不足の品目の米国から輸入の推進、タイを使った原産地偽装の問題解決、米国の一部品目に対する関税の減免、輸入規制緩和等を材料として交渉する予定。タイは米国の貿易赤字ランキング11位(2024年赤字額456億米ドル)。2024年の主な輸出品目はスマートフォン・携帯電話、コンピューターおよび関連装置、ゴム製の空気タイヤ、半導体機器、変圧器である。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が3月25日に発表した2025年2月の自動車生産台数は、前年同月比▲13.6%の11.5万台だった。内訳は国内向けが同▲21.3%の3.7万台、輸出向けが同▲9.5%の7.9万台。新型コロナ前の2019年2月の生産台数18.3万台を下回った。また、2025年2月の国内新車販売台数は同▲6.7%の4.9万台で、輸出台数は同▲8.4%の8.1万台。新型コロナ前の2019年2月の販売台数が8.2万台、輸出台数が10.1万台であり、いずれも新型コロナ前の水準を下回った。
 
(3) FTIが3月25日に発表した2025年2月の自動二輪車生産台数は、前年同月比+0.4%の21.7万台で、3ヵ月ぶりにプラスを記録した。2019年2月の生産台数は21.8万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲3.5%の17.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+17.4%の4.7万台。また、2025年2月の国内販売台数は同+2.7%の14.8万台、輸出台数は同▲33.9%の2.9万台だった。2019年2月の販売台数が14.5万台、輸出台数が3.6万台であり、国内販売台数のみ新型コロナ前の水準を上回った。
 
 
(4) エネルギー政策計画事務局(EPPO)の発表によると、2024年のタイのエネルギー消費による二酸化炭素(CO2)排出量は前年比+1.0%の2億4,570万トンで、増加に転じた。これは、特に下半期の経済成長によるエネルギー需要増加に伴うものであるとEPPOは説明した。エネルギー単位当たりの排出量は2023年の1.991トン/TOE(石油換算トン)から1.989トン/TOEと微減。経済部門別で見ると、発電は前年比+5.1%と増加率が最も大きい。一方、工業は同▲4.5%と減少した。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)の代表団は、3月24日から27日にかけてインドを訪問した。この訪問では、医薬品・医療機器、自動車、半導体それぞれの業界の地場大手企業や関係団体と会談し、タイへの投資計画について交渉した。BOIのナリット長官は、インドは世界で最も急速に成長している経済大国の1つであり、医薬品や医療機器、バイオテクノロジー、自動車、電子機器、デジタル、化学等の技術セクターでリーダーであると述べた。また、今回のインド訪問の目的は、インドの投資家に対しハイテク産業におけるタイの可能性を示し、ASEANの投資拠点としてタイが選ばれることであると説明した。過去10年間(2015年から2024年)で、インドからは161件の投資申請があり、総投資額は130億バーツを超えている。投資先の業界は主に製薬、医療機器、化学品、宝飾品となっている。
 
(2)BOIは3月31日、「One Bangkok」のパレードゾーン6階・7階に新設した「タイ投資・外国人センター(TIESC)」の開所式を開催した。TIESCは、「ワン・スタート・ワン・ストップ投資センター(OSOS)」と「ビザ・労働許可証ワンストップサービス」でこれまで提供されていたサービスを統合することで、投資相談、政府との連絡、長期投資支援、各種ビザの情報および手続きへのアクセスを容易にする。施設内には長期滞在(LTR)ビザおよびスマートビザ専用ラウンジを設ける等、より幅広い専門家と投資家のアクセスを容易にし、国の外国人人材プールを強化して競争力を高めることを目指している。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2025年の2月末時点で金融機関預金残高は25兆8,290億バーツ(前年同月比+2.8%)、貸金残高は30兆6,790億バーツ(同▲0.7%)。政策金利は2月26日に2.25%から2.00%に引き下げられた。

4. 政治動向、その他

(1) タイ政府が3月27日の閣議決定で、カジノを含む複合娯楽施設についての法案を承認した。承認された内容はカジノが施設全体の土地面積または延床面積のいずれか小さい方の10%以下であること、カジノ運営者はマネーロンダリング防止法に基づく金融機関とみなされること、カジノでギャンブルをするタイ国籍の者は定期預金口座の残高5,000万バーツ以上を6ヵ月以上継続して保有していることの証明が必要、といった内容が1月13日に原則承認された法案へ追加された。次に下院で審議される予定。
 
(2) 3月28日午後、ミャンマーを震源としたマグニチュード7.7の地震が発生した。震源地から約1,000キロメートル離れたバンコクも、ビルの亀裂や建設中のビルが倒壊する等の被害が出た。タイ政府が非常事態宣言を出したが、全壊したビル以外のエリアは大きな被害が無いため、4月3日に災害終息宣言を出した。タイ災害防止軽減局によると、4月9日時点で被害のあった範囲はバンコクを含めて18県、死亡者は29人とされている。また、タイ商工会議所は、地震の被害は国内総生産(GDP)の0.06~0.12%相当の106~221億バーツに達するとの見通しを発表し、特に観光業への影響が大きいとの見解を示した。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2025年4月10日)