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タイ国経済概況(2026年6月)

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1.景気動向

(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の5月18日の発表によると、2026年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比+2.8%となり、前期の同+2.5%からやや加速した。支出面から見ると、民間消費支出は同+3.2%と、前期の同+3.3%から小幅に減速したものの、堅調に拡大した。政府消費支出は同+3.4%と前期の同+1.3%から拡大した。投資は公共投資が減速したものの、民間投資が同+10.1%と好調で、全体では前期の同+8.1%から同+9.9%へ高まり、2015年第1四半期以来の高水準となった。物品輸出は同+17.8%と大幅に伸びた一方、輸入が同+33.1%と輸出を上回って拡大し、貿易収支(FOBベース)は14四半期ぶりに赤字に転じた。生産面では、農業が同+0.6%から同+1.2%へ、製造業も同+0.4%から同+0.9%へと改善し、特に電子部品やコンピューター関連が伸びた。宿泊・飲食サービス業も国内外からの観光収入の増加に伴い、同+0.6%から同+2.2%に上昇した。一方、建設業は公共・民間ともに減速し、同+6.2%と前期の同+11.2%から伸びが鈍化した。2026年通年の成長率見通しは、中東情勢を巡るリスクはあるものの、内需刺激策を背景に同+1.5~2.5%に据え置かれている。
 
(2) タイ工業連盟(FTI)が5月25日に発表した2026年4月の自動車生産台数は、前年同月比▲0.4%の10.4万台で、8ヵ月ぶりにマイナスを記録した。内訳は国内向けが同▲1.7%の3.7万台、輸出向けが同+0.3%の6.7万台。また、2026年4月の国内新車販売台数は同+2.5%の4.8万台で、輸出台数は同▲8.4%の6.0万台だった。
 
(3) FTIが5月25日に発表した2026年4月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲4.2%の18.2万台で、2ヵ月ぶりにマイナスを記録した。内訳は完成車(CBU)が同▲6.9%の14.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+8.6%の3.5万台。また、2026年4月の国内販売台数は同+3.8%の13.7万台、輸出台数は同+11.3%の6.8万台だった。
 
(4) タイ政府住宅銀行(GHB)傘下の不動産情報センター(REIC)の5月28日の発表によると、2026年第1四半期の住宅の所有権移転戸数は前年同期比+11.2%の7万2,583戸となり、総額も+3.1%の1,871.8億バーツに拡大した。地域別ではバンコクが最多で、戸数は+11.1%の1万7,746戸だったが、総額は▲4.5%の649.5億バーツに減少した。市場全体では中古物件の比率が67%と高く、700万バーツ以下の住宅を対象としたLTV(融資比率)緩和措置の延長や、所有権移転・抵当権設定手数料の引き下げが市場を下支えしたとみられる。一方、外国人のコンドミニアム所有権移転戸数は▲17.3%の3,241戸に減少し、中国人は最多を維持しつつも▲38.8%と大きく落ち込んだ。対照的にロシア人は+33.0%の383戸で2位となった。外国人によるコンドミニアム所有権移転を地域別にみると、総額ではバンコクが61.4億バーツで首位、戸数ではチョンブリが1,167戸でトップとなった。プーケットは総額が+34.9%と最も高い伸びを示した。2026年通年では、所有権移転戸数が▲1.1%、総額が▲2.3%となる見通し。中東情勢に伴うエネルギー・建材コストの上昇を背景に、住宅価格は今後5~10%上昇すると予想されている。

2. 投資動向

(1) タイ投資委員会(BOI)は5月6日の会合で、総額約9,580億バーツに上る6件の大型投資案件を承認した。このうち3件はデータセンターおよびデータホスティングサービス関連で、投資総額は約9,130億バーツに達する。最大案件は、TikTok System (Thailand) Co., Ltd.による約8,420億バーツの投資で、バンコク都、サムットプラカーン県、チャチュンサオ県でサーバーを増設し、データ保存・処理インフラを拡充する。これにより、タイの地域デジタルインフラ拠点としての役割を強化する。また同社は、タイの起業家向けにデジタルリテラシーや電子商取引に関するカリキュラムの開発にも取り組む。このほか、アラブ首長国連邦(UAE)のDAMAC Group傘下のSkyline Data Center and Cloud Services Co., Ltd.は、チャチュンサオ県で200メガワットまで対応できるデータセンターを整備するため、約460億バーツを投じる。シンガポールのBridge Data Centres IIO (Thailand) Co., Ltd.は、チョンブリ県で134メガワット対応のデータセンター事業に約246億バーツを投じる。残る3件は、再生可能エネルギー、循環経済、資源関連産業の案件である。
また同会合では、投資手続きを迅速化する「タイランド・ファスト・パス」の対象として、520億バーツ相当の9案件を追加した。これにより、第1弾の16案件と合わせた対象案件は計25件、投資総額は約2,230億バーツとなった。さらにBOIは、大規模なデジタル・ハイテク投資の拡大に伴う電力需要に対応するため、エネルギー省およびエネルギー規制委員会(ERC)と、電力供給体制の強化やクリーンエネルギーへのアクセス改善について協議した。具体的には、再生可能エネルギーの直接電力購入契約(Direct PPA)の制度設計、再生可能エネルギー購入制度「Utility Green Tariff 2(UGT2)」の導入、外資企業による太陽光発電設備設置に関する規制緩和、独立系電力供給(IPS)の制度明確化等が議論された。
 
(2)アヌティン首相率いるタイ政府代表団は5月25日、フランス・パリを訪問し、世界的にサプライチェーンの再編が進む中、最先端技術を有するフランス大手企業5社と意見交換を行った。会談では、欧州最大の航空宇宙・防衛企業であるAirbus Group SEと協議した。同社は、デジタル技術による航空システムの高度化やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)の導入を軸にタイでの事業拡大を進めており、専門技術者を現在の160人超から200人超へ増員する計画を示した。さらに、約40年にわたりタイで事業を展開し、BOIの投資奨励を受けた事業への累計投資額が160億バーツを超える世界最大のアイウェアメーカー、EssilorLuxotticaとは、タイにおけるAIグラス製造への投資について協議した。また、EVバッテリー部品の重要素材である黒鉛および導電性カーボンブラックを製造するImerys S.A.に対しては、タイへの投資拡大を呼びかけた。加えて、サイバーセキュリティ・ソリューションを提供するThales Groupとは、タイ政府におけるサイバーセキュリティインフラ整備について意見交換を行い、デジタル認証システム大手のIN Groupeとは、新たなデジタルIDシステムの開発について協議した。なお、2021年から2026年3月までに、フランスからBOIの投資奨励を申請した案件は合計93件、投資総額は292.1億バーツに達しており、両国の経済関係が堅調に推移していることを示している。

3. 金融動向

タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2026年4月末時点での金融機関預金残高は27兆2,410億バーツ(前年同月比+4.9%)、貸金残高は31兆480億バーツ (同+2.0%)。また、政策金利は2月25日に1.25%から1.00%に引き下げられた。

4. 政治動向、その他

(1)5月19日の閣議で承認された、中東情勢に伴うエネルギー危機の影響緩和を目的とした生活支援策「タイ・チュアイ・タイ・プラス」は、5月25日に一般国民向けの登録が開始され、6月1日から一般国民向け・脆弱者向けの支援が始まった。一般国民向け施策「タイ・チュアイ・タイ・プラス(60/40)」は、食品や生活用品などの購入費を対象とするコーペイメント制度で、政府が最大1,200億バーツの予算で支出額の6割を補助する。1日の補助上限は200バーツで、6~9月の補助上限は月1,000バーツ、未使用分は翌月に繰り越されない。対象は18歳以上のタイ国籍保有者で、最大3,000万人が対象。6月1日午後11時時点で利用許可を受けた国民は約2,604万人だった。登録および利用は、従来の半額補助施策と同様に、電子財布アプリ「パオタン」を通じて行う。脆弱者向け施策では、福祉カード保有者約1,300万人に対し、従来の月300バーツの支給に加え、6~9月の4ヵ月間、月700バーツを追加支給する。追加支給分の予算は約369億1,900万バーツ。
 
(2)6月28日に実施予定のバンコク都知事選挙の候補者募集は5月28日~6月1日に行われ、計18人が立候補した。同日実施予定のバンコク都議会議員選挙には計258人が立候補した。都知事選には、前都知事のチャッチャート氏、野党第1党の国民党所属のチャイワット氏、2004~2016年に所属議員が都知事を務めた民主党所属のアヌチャー氏、政治系インフルエンサーのマリカー氏らが名を連ねた。都議会議員選挙では、国民党や民主党のほか、タイ貢献党の元・現職都議らを含むBangkok Possibleグループも候補者を擁立した。与党第1党のタイ誇り党は都知事選に候補者を出さず、タイ貢献党も都知事選・都議会議員選挙のいずれにも党公認候補を擁立しない方針を示した。ただし、タイ貢献党は都議選への出馬を希望する党員に対し、党名やロゴを使った選挙活動を認めている。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
 
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(2026年6月11日)