1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の2月17日の発表によると、2024年通年の経済成長率は前年比+2.5%であり、2023年通年の同+2.0%から加速したものの、東南アジア主要国の中で最も伸び率が低い状況が続いている。1人当たりのGDPは7,496米ドルと、前年の7,332米ドルから伸びた。業種別に見ると、サービス業は観光需要の回復で前年比+3.9%、工業は2023年の同▲1.9%から同+0.9%とプラスに転じた。しかしこれは鉱業が同+9.2%と好調だったため。製造に限定すると同▲0.5%で2023年の同▲2.7%に続いてマイナスになった。一方、農業は2023年の同+2.0%から同▲1.0%とマイナスに転じた。また、2025年通年の成長率見通しは同+2.3~3.3%と前回予想から変動はなかった。
(2) タイ工業連盟(FTI)が2月24日に発表した2025年1月の自動車生産台数は、前年同月比▲24.6%の10.7万台だった。内訳は国内向けが同▲31.8%の3.2万台、輸出向けが同▲21.1%の7.5万台。新型コロナ前の2019年1月の生産台数18.0万台を下回った。また、2025年1月の国内新車販売台数は同▲12.3%の4.8万台で、輸出台数は同▲28.1%の6.2万台。新型コロナ前の2019年1月の販売台数が7.8万台、輸出台数が8.2万台であり、いずれも新型コロナ前の水準を下回った。
(3) FTIが2月24日に発表した2025年1月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲4.7%の21.4万台で、2ヵ月ぶりにマイナスを記録した。2019年1月の生産台数は21.8万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲1.1%の17.6万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲18.3%の3.8万台。また、2025年1月の国内販売台数は同+1.5%の15.6万台、輸出台数は同▲4.9%の3.4万台だった。2019年1月の販売台数が14.9万台、輸出台数が2.6万台であり、いずれも新型コロナ前の水準を上回った。
(4) タイ商務省の発表によると、2024年の自由貿易協定(FTA)を利用した貿易額は前年比+5%の3,603.4億米ドルで、輸出額が同+3%の1,720.5億米ドルだった。輸出先別で見ると、ASEANが同+5%で、そのうちカンボジアが同+43%と伸び率が大きかった。ASEAN以外の輸出先ではペルーが同+33%、インドが同+16%、ニュージーランドが同+13%と伸び率が大きかった。タイは現在14件のFTAを締結しており、それ以外に妥結済で発効待ちのFTAが2件、交渉中のFTAが4件ある。
2. 投資動向
(1) タイ投資委員会(BOI)のナリット長官は2月24日、2月19日から21日までの日本訪問について、大成功だったと述べた。2月20日に三井住友銀行と共催した「日タイ投資フォーラム2025」には、自動車業界や部品業界を中心に350社を超える日本の大手企業が参加し関心の高さを示した。基調講演で同氏は、特に投資を期待する分野として、BCG産業、電気自動車、半導体・エレクトロニクス、デジタル、国際ビジネスセンターという5つの戦略産業を挙げた。また日本で特に関心の高い自動車・部品関連の生産効率向上のための措置等、発令済みのさまざまな措置について説明した。日本訪問を終えて同氏は、面会したすべての企業がタイへの投資を継続的に拡大する計画を持っており、日本は依然としてタイを重視していると述べた。さらに、地政学的なリスクの低さ、インフラが整っていることから、主要生産拠点としてタイにはさらなる成長可能性があるとの考えを示した。
(2)BOIは3月5日、台湾プリント基板協会(TPCA)と共催で「TPCAタイPCBフォーラム2025」を開催した。これは、近年の地政学的ダイナミズムの変化により、台湾においてPCBの生産拠点としてタイが注目されていることから、企画されたものである。BOIのナリット長官は、このフォーラムには台湾プリント基板協会から60名以上が参加したことを明らかにした。また、特に中国、台湾、香港、日本のPCBメーカーは、インフラが整備されているタイの強みを認識しており、タイは重要な投資先になると述べた。過去3年間のPCBに関するBOI投資奨励申請数は130件以上、総投資額は2,020億バーツを超えている。その結果、タイはPCBの生産においてASEANで1位、世界でもトップ5に位置している。
3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2025年の1月末時点で金融機関預金残高は25兆7,560億バーツ(前年同月比+3.0%)、貸金残高は30兆7,000億バーツ(同▲0.3%)。政策金利は2月26日に2.25%から2.00%に引き下げられた。
4. 政治動向、その他
(1) タイ空港公社(AOT)の発表によると、2025年1月のタイ主要6空港(スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイ、チェンライ、ハジャイ)の利用者数は、前年同月比+16.7%の1,262.6万人だった。国際線は同+20.8%、国内線は同+10.4%でいずれも前年同月を上回った。空港別では、スワンナプームが同+13.7%の607.0万人、ドンムアンが同+20.4%の307.2万人、プーケットが同+22.1%の200.0万人、チェンマイが同+17.2%の101.0万人、チェンライが同+6.3%の19.5万人、ハジャイが同+11.8%の27.9万人だった。また、タイ国政府観光庁(TAT)は高額消費者を対象とした観光促進戦略を発表した。同戦略では、さまざまなイベントやスポーツ大会を開催することで、ユニークで充実した体験を提供することを目指す。
(2) 運輸大臣のスリヤ氏は2月19日、MRTピンクラインの支線(Si Rat~IMPACT間)が5月下旬に試運転を開始し、6月下旬に無料乗車を開始する予定と発表した。7月19日の正式開通以降の運賃は15~22バーツ。支線の1駅目のImpact Muang Thong Thani駅は展示会場「インパクト・チャレンジャー・ホール」と直結するスカイウォークも建設されている。
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当記事は、三井住友銀行バンコク支店がとりまとめた資料を、同支店のご好意により利用させて頂いています。
改定 第3版(2025年3月14日)
